ビジネスシーンなどでよく見聞きする「失念(しつねん)する」という表現方法。
よく聞いたり使ったりする言葉なんだけど詳しい意味や使い方を理解していないという人も少なからずいると思います。
社会人として最低限の意味や使い方だけは頭に入れておきたいものですよね。
そんな本日は「失念(しつねん)」の意味と正しい使い方、そして類語と例文について詳しく解説したいと思います。
「失念(しつねん)」の意味は?
まず最初に「失念(しつねん)」の意味について見ていきましょう。
「失念」は「しつねん」と読む名詞ですが、通常は「失念する」という動詞の形で用いられます。
次に「失念」を構成する漢字をみていきましょう。
「失」は形声文字で、人の手と「乙」という意味を示す字形からなっています。
「乙」は「逸」と同じく、「ある場所から抜け出す」という意味を持ちます。
すなわち「失」は「手から物が抜け落ちる」という意味を示す字です。
ここから「失う」、「なくす」といった意味に推移したと考えられます。
なおこの字の音は元来は「イツ」でしたが、次第に「シツ」に変化したとされています。
ただ一説には、「失」は「乙」という意味が最初にあった会意文字だとも考えられるそうです。
一方「念」は形声文字です。
「今」という字が音を、「心」が形を表しています。
「今」という字には、そもそも「時間を止めて、押さえている状態」という意味があるとされます。
このため「念」は、「昔から現在まで、いつも心にかけて、固くとどめている」状態を示す漢字です。
ここから転じて、「考え」や「思い」、「心にとどめ置くこと」や「心を込めて読むこと」といった意味合いを示すようになりました。
このように「失念」は、「考えや思いがなくなる」という趣旨を表します。
すなわち「覚えていたはずのことを思い出せないこと」や「うっかり忘れること」といった意味合いの言葉です。
このほかに、「失念」には仏教用語としての意味もあります。
これは仏教でいう「煩悩」のひとつとされ、「物を忘れ、気づきを失った心であり、仏法の理論や仏法の言葉を忘れたりすること」や「心を散乱させてしまうこと」、あるいは「記憶を妨げる心の作用」を示すとされます。
いずれにしても「覚えていたことを忘れる」という大本の意味合いとしては同じ用法だといえるでしょう。
「失念(しつねん)」の使い方は?
次に「失念」の正しい使い方について見ていきましょう。
「失念」はビジネスシーンや一般的なやり取りでは、「忘れてしまった」ことを表す敬語の表現だといえます。
取引先などと申し合わせた約束や、持参するべき資料を忘れた際などに、相手に対して丁寧に謝罪する場合に使用されます。
口上でも文章でも用いられる表現ですね。
ビジネスの場では「うっかり忘れた」、「不注意でミスしてしまった」ことをわびる言い方が一般的です。
例えば「サンプルを持参するのを失念しておりました。すぐに別の者に持ってこさせます」といった用法です。
「ものごとの記憶をなくす」といった表現では、非常に普遍的に使われる「忘れる」がありますが、「失念」との違いは何でしょうか。
「忘れる」は、「さっきまで覚えていたのだが、うっかり頭から消えてしまった」というニュアンスと、「あることを意識の中に置かず、意図的に気にかけない状態」という意味合いと、両方の場合で用いることができます。
つまりは「記憶をなくす」ことを幅広く示す最も平易な言い方だといえます。
例えば、前者では「あ、傘を電車に忘れてきてしまった」、後者では「楽しすぎて時がたつのを忘れた」といった用法です。
これに対し「失念」は「うっかり忘れ」の意味合いが強い表現です。
そしてそのことを丁寧に、あらたまった形で言い表す言葉だといえます。
「失念(しつねん)」の類語と例文を教えて?
最後に「失念」の類語と例文をご紹介したいと思います。
まず「失念」の類語には次のようなものがあります。
◆類語
- ど忘れ
- 置き忘れ
- 物忘れ
- 見忘れ
- 見逃し
- 聞き逃し
- 遺却
- 忘失
- 廃忘
- 忘却
- うっかりした
- ぼんやりした
- 気づかず
などがありますね。
「失念」の例文としては次のようなものが挙げられます。
◆例文
- お名前を失念してしまい、まことに失礼いたしました。
- お約束を失念していたわけではないのですが、急用が立て込んでしまいお伺いできず、申し訳ありませんでした。
「失念」の類語と例文をまとめてご紹介しました。
ビジネスシーンなどで活用する場合は是非、参考にしてください。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
「失念(しつねん)」の意味と正しい使い方、そして類語と例文について詳しくご紹介しました。
主にビジネスシーンなどで凡ミスをしてしまったり物事を忘れてしまった場合にお詫びをする意味で使う言葉ということが分かりました。
職場などで出来ることなら使うのは避けたい言葉だと思いますが、もしそのような場面になった際は参考にして頂けたらと思います。