私生活やビジネスの場で「したためる」という言葉をよく使ったりしますか?
「手紙をしたためる」という言葉はよく耳にするのですが、「手紙を書く」という表現とは意味合いが違うのでしょうか。どのような場面で「したためる」という言葉を使うのかとても気になったので調べてみました。
そんな本日は「したためる」の意味と正しい使い方、そして語源や漢字・類語・例文を詳しくご紹介したいと思います。
「したためる」の意味と使い方は?
まず始めに「したためる」の意味と正しい使い方を見てみましょう。
「したためる」という動詞は、主には手紙などを「書き記す」という意味を持つ言葉です。
古風な表現ですので、手紙や書画、かしこまった文章などを書くことを、思いを込め、やや趣深く述べる際に使われることが多い表現だといえます。
「したためる」はこのように「書き記す」という意味のほかに、「飲み物を飲んだり、食事をしたりする」、「整理する、処理する」、「支度(したく)する」、「(細工などを)仕掛ける」、「(世の中を)治める」といった意味を示す場合もあります。
ただ、これらはいずれもかなり古い表現ですので、現代の日常会話や文章の中では、ほとんど見られなくなった用例だといえます。
例えば、梶井基次郎の「冬の日」という小説の一節に「夕餉(ゆうげ=夕飯)をしたために階下へ下りる頃は」といったくだりがあり、ここでは「したためる」が「食べる」という意味で用いられています。
また源氏物語にも「万(よろず)の事どもしたためさせ給ふ」(全ての事を処理なさる)といった言い方が見られます。
しかし現代では、一般には「書く」「記す」という意味での用法がもっぱらだといえます。
ただし、次の項目でご紹介する語源からも分かる通り、ただ単に「メモ書き」や「走り書き」のように簡略に書いたり、「書き殴る」のではなく、「しっかり準備し、心を込めて書き記していく」といったニュアンスがある言葉です。
「したためる」の語源や漢字は?
次に「したためる」の語源と漢字を見てみましょう。
「したためる」を漢字で書くと?
「したためる」という動詞を漢字で書くと「認める」となります。
「認」は通常は「みと(める)」と読みますが、同じ送り仮名でも「したためる」とも読むことができます。
「したためる」は前述のように古い表現ですが、これはそもそも古語から由来しているためです。
先ほどご紹介した源氏物語のほか、平家物語にも「準備を整える、仕掛ける」といった意味での用例があります。
また松尾芭蕉の「奥の細道」には、「あすは故郷に返す文をしたためて」(あすは故郷に送る手紙を書いて)といった一節がみられます。
「したためる」の語源は?
「したためる」の語源には諸説あります。
一説には「粘り強い、しっかりした」という意味の「したたか」と同根の言葉であるといわれ、そこから「しっかり整える」といった意味に転じたという見方。
あるいはまた、「親しい」の元である「親し(したし)」の語幹に「方向、性質」を表す「手(た)」を接続した「したた」に、接尾語の「める」をつなげた形という見方もあります。
もともと「認」と「親」や「調」は縁が近い字とされ、「しっかりと整える」、「手抜かりなく行う」という元来のニュアンスが、この字に当てはめられたといった説も有力といわれます。
「したためる」はこのように、元来は「周到な準備で確かに処理する」といった意味合いを持つ言葉であることは確かなようです。
そこから転じて、そうした含意を持ちながら「書く」、「食べる」、「支度する」といった具体的な行動を示すようになったと考えられます。
「したためる」の類語と例文を教えて?
最後に「したためる」の類語と例文をご紹介します。
類語
現代主に使われる「書く」という意味での「したためる」の類語としては、次のようなものが挙げられます。
- 書き綴る
- 書きためる
- 揮毫する
- 書き下ろす
- 筆記する
- 執筆する
- 書き表す
- 表記する
- 記述する
例文
またこの用法での「したためる」の例文には、次のようなものがあります。
- 色紙などというものは、現役で戦っている者がしたためるべきではない。
- なぜ僕があなたに手紙をしたためる気になったのか、お話ししましょう。
- 急ぎ事件の報告書をしたためたいと存じます。
- 遺書をしたためるときの人の気持ちというのは、一体どういうものであろうか。
- 一念発起して日記をしたため始めたのだが、いつまで続くことやら。
- 紹介状を一筆したためていただけませんでしょうか。
「したためる」の類語と例文をまとめてご紹介しました。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
「したためる」の意味と正しい使い方、そして語源や漢字・類語・例文を詳しくご紹介しました。
おさらいをすると一般的には「手紙をしたためる」など何かを書き記すときに利用する言葉になります。
最近ではあまり使わない表現方法なので、聞き慣れないと思いますが、知識として頭に入れておくといいかなと思います。