お手紙を書いたりビジネス文書を書き出す時、さらにメールやラインなどで「~しづらい」「~しずらい」と書く場合が多々あると思います。
例えば「操作しずらい」や「歩きづらい」など「しづらい・しずらい」と表現する言葉はたくさんあります。ですが、どっちが正しい表現方法なのか悩んだことはありませんか?
そこで「しづらい・しずらい」はどっちが正しいのか、そして違いと使い分け方について詳しく解説したいと思います。
「しづらい・しずらい」はどっちが正しい?
まず最初に「しづらい・しずらい」はどっちが正しいのか解説していきます。
「しづらい・しずらい」とは、「する」という動詞の連用形に「辛い」という接尾語がついた形の語句です。
接尾語の「辛い」は、「する」のような動詞の連用形について、その動作をすることに困難を感じる意味を示すものです。
言い換えとしては「~しにくい」とも言うことができますね。
例えば「老眼で最近は辞書の小さい字が見辛い」、「あの人はどうも無愛想で話し辛い」、「この文章は冗長で読み辛いなあ」といった用い方になります。
さてこの「辛い」は、ひらがな表記をする際に「しづらい」、「しずらい」の二通りの書き方を思い浮かべますが、どちらが正しいのでしょうか。
結論から先に申し上げると、表記としては「しづらい」が正しいといえます。
また「しずらい」は間違った用法です。
「しづらい」は漢字で書くと、前述のように「し辛い」です。
「辛い」は平仮名書きでは「づらい」ですので、「し辛い」もおのずと「しづらい」になります。
しかしメールやインターネット上の表記をみると、しばしば「しずらい」、「分かりずらい」といった書き方を目にします。
これは「現代仮名遣い」における「ず」、「づ」の書き分けと混同しているために起きている現象だといえそうです。
昭和61年に内閣告示された「現代仮名遣い」では、歴史的にこれまで文章では「づ」とかな表記されてきた言葉も、原則として「ず」に統一するとされています。
このため実際に、「地面」は「じめん」、「布地」は「ぬのじ」、「頷く」は「うなずく」、「訪れる」は「おとずれる」、「就中」は「なかんずく」と書かれます。
こうしたことに引きずられ、「し辛い」も「しずらい」と書きがちになりますが、これは「仮名遣い」とは観点が異なることに注意しなくてはなりません。
「現代仮名遣い」では、「づ」や「ぢ」を使う例外として、同じ音の連呼のケース、また二つの言葉の連語については「づ」や「ぢ」を用いることになっています。
例えば「鼻血」は「鼻」と「血」の連語ですから「はなぢ」、「言葉遣い」は「言葉」と「遣い」の連語なので「ことばづかい」となります。
同音連呼の例では「縮む」→「ちぢむ」、「葛籠」→「つづら」などです。
この原則に従い、「し辛い」も「する」と「辛い」の連語であるため、「しづらい」が正しい表記ということになります。
「しづらい・しずらい」の正しい使い方は?
次に「しづらい・しずらい」の正しい使い方について見ていきましょう。
接尾語の「~辛い」や「~にくい」は、ある動作を行うことについて、心理的に、あるいは物理的・技術的に困難な場合に使われる言い方です。
「肉がかたくて食べ辛い」、「懐が深くてやり辛い相手」といった用例です。
抽象的な事柄に関して「行うのが困難」という意味を表す場合は「~難い」が主に用いられます。
また「しづらい」、「しにくい」は、行動が困難ではあるものの、何とか頑張ればできる、という状態を示しますが、「難い」は心理的に抵抗があり「とても踏み切れない」、「行うのはほぼ不可能」といったニュアンスとなる違いがあります。
例えば「愛着ある服」であればいずれも使用できそうですが、「威圧感が強く恐ろしげな人」であれば「近寄りがたい」が適切となります。
また口語や一般的な会話などでは「しづらい」や「しにくい」の方が頻繁に使われています。
「し難い」はやや堅い言い方といえるでしょう。
「しづらい・しずらい」の違いと使い分け方は?
最後に「しづらい・しずらい」の違いと使い分け方をおさらいしてみましょう。
ご説明してきたように、「し辛い」のひらがな表記としては「しづらい」が正しく、「しずらい」は誤用となります。
ビジネスシーンや公の場所で文書を配布したり、メールなどを立場が上の人、目上の方に送る際には、特に仮名遣いには留意することが必要でしょう。
仮名遣いの間違いは、読みやすいひらがなだけに一見して違和感が強く、漢字の誤用などと比べても、書き手の素養や注意深さをより疑われる恐れがあるためです。
もっとも最近は、手書きの手紙などでない限り、パソコンやスマホに搭載されている文書作成ソフトで「しずらい」と入力して変換すると、「しづらいの誤り」などと警告が現れるものも多いようです。
それでもこうした仮名遣いの基本的知識は、社会人のマナーの一つとしても、あらかじめ身につけておきたいものです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
「しづらい・しずらい」はどっちが正しいのか、そして違いと使い分け方について詳しくご紹介しました。
表現方法として正解なのは「しづらい」が正しく、「しずらい」は誤用ということです。
普段、会話の中ではあまり意識しないことでも文字として表現する場合は注意が必要になってくるので頭に入れておくと良いでしょう。