ビジネスの場などでよく「恐れ入ります」という言葉を見聞きすると思います。
何気なく使っている人も割りと多いんじゃないかと思いますが「恐れ入ります」という言葉にはどのような意味合いがあるのでしょうか。
「恐れ入ります」と同じような言葉で「恐縮です」という言葉もありますよね。
そんな本日は「恐れ入ります」の意味と正しい使い方、そして類語や例文について詳しく解説したいと思います。
「恐れ入ります」の意味は?
まず最初に「恐れ入ります」の意味について見ていきましょう。
「恐れ入る」という語句は、「恐れる」という動詞と、動詞の連用形につけてその意味を強調する接尾辞「入る(いる)」から構成されています。
「恐れる」の「恐」という漢字は、心が形を、字の上半分が音を示す形声文字であると同時に、象形文字でもあるとされます。
字の上半分は工具のノミを持つ手を表すとされ、「慎み深く大工仕事をする」という趣旨から由来しているとの説もあります。
「恐れる」という動詞自体は、「危険を感じて不安になる」や「よくないことが起こるのではないかと心配する」といった意味合いで一義的には使われます。
それとともに、「近づきがたいものとして、かしこまり、敬う」や「畏敬 (いけい) する」といった意味での用法も重要です。
本来の漢字の意味合いからは、この「慎み深く行動する」といったイメージの方が原意に近いのかもしれません。
古語の「おそれる」も、本来は「気づかい、心配」、あるいは「おそれ多いこと」といった意味合いとされています。
時代が下り、近世・江戸時代にいたって、語尾に「入る」が付いたようです。
このように「恐れ入る」という言葉は、「おそれ」の本来の意味に近く、まず一つには「相手に面倒や気遣いをかけて、すまないと思うさま」を示します。
第二には「相手の能力がすごいのを見て、参ってしまう」、「驚嘆する」といった意味合いです。
この二番目の意味が転じて、 逆に「あまりのひどさにあきれる」という場合にも用いられます。
例えば「あれで本人は天才のつもりだから、まったく恐れ入るよ」といった言い方です。
この「恐れ入る」を丁寧な言い方に換えたものが「恐れ入ります」ですが、現代では「恐縮する」や「申し訳ない」に近く、丁寧にあいさつしたり、相手に呼びかけたりする際の定型的な「決まり文句」、「枕詞」的な用法も一般的になっています。
「恐れ入ります」の正しい使い方は?
次に「恐れ入ります」の正しい使い方について見ていきましょう。
「恐れ入ります」は、前述のように、現代の用例では「恐縮です」や「申し訳ありません」とほぼ同義の言葉だといえます。
「恐れ入ります」を使う際のニュアンスとしては、「謝罪」、「感謝」、「感心」といった感情の丁寧な表現といえるでしょう。
それと同時に、例えば「すみません」のように、単体として軽い挨拶の言葉としても使われます。
会話や書面でいわば「潤滑油」的な働きをしており、何かを依頼したり、注意したりする場合に「恐れ入りますが」という形で文頭などに挿入するのが一般的です。
「恐れ入ります」を感情表現として用いる場合には、「~して恐れ入ります」のように、文末で使用する形が多いようです。
「感謝」を伝える場合には、単に「ありがとうございます」と述べるよりも、「自分の身には余るような待遇に、相手の心遣いを申し訳なく感じ、身の縮むような思い」といった、へりくだったニュアンスを伝えることができます。
また「感心」や「感動」を伝える際には、「恐れ入ります」を過去形にした「恐れ入りました」という形での使用が通例です。
相手の腕前や実力を称える場合に、「すばらしいですね」や「感激しました」といった意味合いで、「恐れ入りました」と使用します。
これも、単に相手を賞賛するだけでなく「出来栄えのあまりの素晴らしさに、自分の技術が恥ずかしいほどだ」と謙遜する印象を与える言い方だといえます。
会話の際の「クッション」的な役割を果たす言葉としても、「恐れ入ります」はビジネスなど多くの場面で便利に使用することができます。
ある用件を伝える際に、一言、文頭に「恐れ入りますが」を付けるだけで、不躾な印象を減らし、失礼なく、相手の注意をこちらに向けることできます。
「恐れ入ります」の類語と例文は?
最後に「恐れ入ります」の類語と例文をご紹介したいと思います。
「恐れ入ります」の類語には次のようなものがあります。
感動して讃える場合に使う類語は、、
- 感服します
- 称賛に値します
- 見上げたものです
- 素晴らしいです
などがあります。
畏れ多い気持ちを示す場合に使う類語は、、
- 恐縮します
- 身が縮まる思いです
- 身を律する思いです
- 恐れ多いことです
- 恐懼いたします
などとなります。
「恐れ入ります」の例文としては、次のようなものが挙げられます。
◆例文
- 恐れ入りますが、お探しの書名をもう一度教えていただけますか
- さすがは見事なお手前、恐れ入りました
- 大変お待たせしてしまい、誠に恐れ入ります
- 私、○○と申します。恐れ入りますが、ご主人はご在宅でしょうか
「恐れ入ります」の類語と例文をまとめてご紹介しました。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
「恐れ入ります」の意味と正しい使い方、そして類語と例文について詳しくご紹介しました。
ビジネスシーンなどでよく見聞きする表現方法なので意味や使い方をしっかりと覚えておきましょう!
同義語としては「恐縮します」や「申し訳ない」などと同じような意味合いがあるので時と場合で使い分けると良いですよ。