みなさんは日々の生活の中で「心ならずも」という言葉を見聞きしたりしますか?
「心ならずも」という言葉を聞いてどんな意味合いがあるのか気になってしまいますよね。
そんな本日は「心ならずも」の意味と正しい使い方、そして類語や例文について詳しく解説したいと思います。
「心ならずも」の意味は?
まず最初に「心ならずも」の意味について見ていきましょう。
「心ならずも」という語句は、古くから日本で使われている「心ならず」という言葉から由来している表現だと考えられます。
まず「心」とは、昔から日本語では非常に重要な役割を果たす言葉です。
「心」という漢字は象形文字で、心臓の形を表したものです。
そして「心」とは、人に備わった知覚、感覚、感情、思考、意思などの働き全般を示します。
いわば人の中身そのものを広く表すともいえるわけで、「心=こころ」にまつわる慣用表現は非常に多岐にわたります。
「心○○」といった表現は、大きくは、精神、感情、意思の三つにわけた言い方ににまとめられるようです。
精神を表すものでは「心が広い」、感情を示すものでは「心が騒ぐ」など、多くの言い方があります。
それらの中でも「心ならずも」は、何かをしようとする意思の働きに関する言い方だといえます。
例えば「心構え」や「心づもり」なども同様です。
さて古語の「心ならず」は、前述した名詞の「心」に、断定の助動詞「なり」の未然形、さらに打消の助動詞「ず」が付いた構成になっています。
意味としては「本心ではない」、あるいは「無意識に、うっかりと」という用法でした。
例えば源氏物語には「こころならぬ人、少しもまじりぬれば」(本心でない人が、少人数でもまじってしまうと)といった一文が見えます。
「心ならずも」は、これに「も」という接続助詞を付けたものです。
これは未成立、あるいは確定した事実を条件とし、それに制約されずにある事柄が実現する意味を表す助詞です。
「たとえ、そうであっても」や「~なのだが、それにしても」、「…だとしても」といったニュアンスを示します。
こうしたことから「心ならずも」は「自分の意思に反して」や「希望や願いとは違うが」、また「自分の本意ではないが、やむをえず」といった意味を示す、副詞的な表現だといえます。
「心ならずも」の正しい使い方は?
次に「心ならずも」の正しい使い方について見ていきましょう。
「心ならずも」はこのように、後に続く行為について、「自分の本当の気持ちではないこと」を指し示す表現だといえます。
あることが、自分の望んでいたものとは異なる結果になったり、「自分は本当はそう思っていないのだが、意に反してそれを行わざるをえない」、といった場合に用います。
「心ならずも」に意味合いや用例が近い言葉としては「やむなく」を挙げることができます。
これらの語は、いずれも副詞的に「不本意ではあるが」といった意味合いで、後の行動の文章を修飾する使い方をします。
ただ「やむなく」は、自分の感情や思い入れとはさほど無縁に、物理的・環境的に仕方なくそうした状況に立ち入った、と淡々と述べる印象があるのに対し、「心ならずも」は「本当はそんなことはしたくないのだが、意図に反してあえて何かをやらねばならない」といったニュアンスが強くこもる表現だといえます。
例えば、他者からの誘いや申し出を断ったことを釈明する場面などで、自分の心情に重きを置くのであれば「心ならずも」を、自分ではどうしようもない環境的な要因を強調する場合では「やむなく」を用いるなど、どのような意味を強めたいかによって使い分けることができるといえるでしょう。
「心ならずも」の類語や例文を教えて?
最後に「心ならずも」の類語と例文をご紹介します。
「心ならずも」も類語としては次のようなものがあります。
◆類語
- いやいや
- 不承不承
- 不本意だが
- 仕方無く
- 渋々と
- まさかの
- 思わぬ形で
- 遺憾だが
などがありますね。
「心ならずも」の例文としては次のようなものが挙げられます。
◆例文
- 早速お伺いしてお悔やみを申し上げるべきところ、諸般の都合で心ならずも書中をもって申し上げる次第です。
- 昨日はお約束の時間に心ならずも遅れましたこと、お詫びいたします。
- 先般は心ならずもご不快の念を招き、ご迷惑をおかけいたしまして、誠に申しわけございませんでした。
「心ならずも」の類語と例文をまとめてご紹介しました。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
「心ならずも」の意味と正しい使い方、そして類語や例文について詳しくご紹介しました。
おさらいをすると「心ならずも」は「自分の意思とは反して」や「希望や願いとは違うが」と言った意味合いがある表現方法です。
「心ならずも」の類語や例文を一緒に見るとより一層、理解が深まると思うので是非、参考にしてくださいね。