みなさんは日々の生活の中で「杞憂(きゆう)」という言葉を見聞きしたりしますか?
よく「杞憂に終わる」という言葉を耳にする機会が多いですがどんな意味合いがあるのでしょうか。
そんな本日は「杞憂」の意味と正しい使い方、そして由来や類語、例文について詳しく解説したいと思います。
「杞憂」の意味と由来が気になる!
まず最初に「杞憂(きゆう)」の意味と由来について見ていきましょう。
「杞憂」という言葉は「きゆう」と読みます。
中国の故事にちなんで成立した日本語の熟語です。
漢字や文化が中国大陸から伝来したことと相まって、日本語の中には、古代中国のさまざまな伝承、文献などに由来する故事成語が数多くあります。
その中でも「杞憂」は有名なものの一つといえるでしょう。
「杞憂」の「杞」とは、古代中国の殷代から戦国時代にかけて存在した国の名前です。
いくつもの国が栄えては滅ぶ時代にあって、杞もかなり小さい国だったようで、現在残されている史料などは非常に少ないそうです。
「杞憂」の「憂」は会意文字です。
この漢字は「頁」と「心」と「夕」から成っています。
「頁」とは人の頭のことを指し、「夕」は「人が行き詰まり悩むこと」とされます。
すなわち「憂」は、「心の悩みが顔に表れる」ことを表す字です。
ここから「憂う」といったように、悩んだり、心配したりする様子を表すようになったとされます。
このように「杞憂」は「杞の国の人の憂い」という意味で、「列子」という中国・戦国時代の寓話集から取られた言葉です。
「列子」は元来は、この書を書いた思想家の名前ですが、そのまま書名になっており、全部で八巻から成ります。
故事・寓言・神話を多く載せており、唐代に道教教典として尊ばれたようです。
「杞憂」はこのうちの「天瑞」という本にみえる故事です。
かつて、杞の国の人が、「天が落ちてきたり、大地が崩れたりしないか」とおよそあり得ないことを心配して、夜も眠れず食事も喉を通らなかったそうだ、というエピソードです。
このことから、「本来、する必要もない無用な心配をすること」や「取り越し苦労をすること」を、「まるで杞の人の憂いのようだ」との趣旨で表現したのが、この名詞の由来です。
「杞憂」の正しい使い方は?
次に「杞憂」の正しい使い方について見ていきましょう。
このように「杞憂」は、もともとの語意からすると、「しても無駄な心配」、あるいは「必要のない配慮や懸念」というニュアンスを持つ言葉です。
単に何かを気にしたり、「大丈夫だろうか」、「うまくいくだろうか」と思い悩むだけではなく、本来あり得ないこと、「行きすぎ」、「気にしすぎ」といえるような事柄まで、過剰に想定して不安がる状態を表します。
日本語表現では「取り越し苦労」が一番近いといえるでしょう。
「杞憂」に似た言葉に、「思い過ごし」という言い方があります。
これも「杞憂」に近く、「考え過ぎること」、「余計なことまで考えて心配すること」、「つい悪い方に考えること」という意味があり、やはり「余計な推測をすること」を示します。
ただ考えすぎの度合いとしては、「杞憂」の方が元来の意味からは相当過度であるといえます。
「杞憂」とはすなわち「取り越し苦労」であり、「可能性がまったくないような、不要で無駄な心配をすること」だからです。
これに対して、「思い過ごし」は「やや余計なことを考え過ぎる」とか、「物事を悪い方に考える」というニュアンスとなります。
「必要がない」、「そんな恐れは全くない」とまでは言えないものの、「そこまではちょっと考えすぎだろう」といった印象です。
例えば「最近彼が暗いので、何かあったのかと気にしていたのだが、思い過ごしだった」のような使い方です。
このように、大仰さの程度では「杞憂」は最高ランクに心配性な状態を示す言葉ですが、現代では次第に使い分けがあいまいになっているようです。
故事成語らしい堅い印象が文章のアクセントになることからも、「結局はうまくいった」という軽い感じの文脈でも最近ではよく使われています。
後ほど例文をご紹介します。
「杞憂」の類語と例文を教えて?
最後に「杞憂」の類語と例文をご紹介したいと思います。
「過剰な心配」という趣旨での「杞憂」の類語には、次のようなものがあります。
◆類語
- 強迫観念
- 被害妄想
- げすの勘繰り
- 無用の不安
- いらざる心配
などがあります。
「杞憂」の例文としては次のようなものが挙げられます。
◆例文
- 今度の人事異動で転勤を命じられるかと気が気じゃなかったが、杞憂でよかったよ。
- 杞憂かもしれないが、彼はこのところ体調が優れないようだ。一度病院に行くよう勧めてみようと思う。
- 家を出た後、いつも鍵の掛け忘れが気になって一度戻るんだが、毎回杞憂に終わる。
「杞憂」の類語と例文をまとめてご紹介しました。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
「杞憂」の意味と正しい使い方、そして由来や類語、例文について詳しくご紹介しました。
ちなみに「杞憂に終わる」の意味合いは「取り越し苦労」「心配する必要がなかった」などの意味合いがありますね。
もし使う場面がありましたら是非、参考にしてください。