日々の生活の中で「拝聴する」という言葉を見聞きしたり実際に使ったりしますか?
「拝聴する」と聞いてどんな意味のある言葉なのか、そしてどんな場面で使う言葉なのか気になってしまうと思います。
そんな本日は「拝聴する」の意味と使い方、そして敬語や類語、例文を詳しく解説したいと思います。
「拝聴する」の意味と使い方は?
まず最初に「拝聴する」の意味と正しい使い方を見ていきましょう。
「拝聴する」という言葉は、「拝聴」という名詞を補助動詞「する」で動詞化している形の語です。
「はいちょうする」と読みます。
「拝聴する」の「拝」という漢字は、会意文字です。
手へんは「5本指のある手」の形、すなわち「手」を意味します。
つくりの部分は「枝のしげった木」の形を示すとされます。
これは「邪悪なものを取り除く為に、玉串(神社を参拝した人や神職が神前に捧げる、木綿をつけた枝)を手にしておがんでいる」様子を表すといわれます。
このことから「拝」は「おがむ」といった意味になりました。
「拝聴する」のような、ある動作を表す漢字の前に付ける「拝」は、「つつしんで~する」という謙譲の意味を表す用法です。
こうした言葉は、ほかにも「拝見」、「拝読」、「拝察」などの例があります。
さて「拝聴する」の「聴」という字は、会意文字であり、また形声文字です。
耳へんは器官の「耳」を表し、「突き出る」という意味も示します。
つくりの部分は、上にまじないの印である「十」をつけた目と、心臓の形を表すもので、「まっすぐな心」を意味するとされます。
このことから、「聴」は「耳を突き出し、まっすぐな心でよくきく」といった意味合いになります。
このため「聴」は、同じ「きく」という動作でも「聞」という字とは若干意味合いが異なります。
「聞」は「自然に耳に入る」や「尋ねる(質問する)」ということであり、例を挙げると「聞き流す」や「道を聞く」となります。
一方「聴」は「耳を傾けてきく」、「注意してきく」、「認める」といった意味合いになり、「音楽を聴く」、「要求を聴き入れる」という用例となります。
これらのことから、「拝聴する」とは、聴くことの謙譲語だといえます。
すなわち「つつしんで、注意深く聴く」ことであり、聴く相手を敬い、その動作をへりくだっていう語です。
主には、ビジネスシーンや公の場でかしこまって使用する言葉であり、相手の意見や話を聞く前、あるいは聞いた後に、そのことをありがたく思い、敬って述べる言い方だといえます。
「拝聴する」を敬語に直すとどうなる?
次に「拝聴する」を敬語に直すとどうなるのか調べてみました。
「拝聴する」はそれ自体でへりくだった表現になっていますので、敬語に直すとすると「拝聴します」や「拝聴いたします」となります。
ビジネスの場面などでは「拝見させていただきます」といった言い方もよく耳にします。
やや過剰な敬語表現ではありますが、接客や式典などの場では「~させていただく」は慣習的によく使う言い方になっており、今ではさほど違和感なく受け入れられているといえるでしょう。
「拝聴する」を敬語として使用する際には、いくつか注意点が挙げられます。
「拝聴」は「つつしんで聴く」ことですので、講演、講話や音楽などに対して用いるもので、演技や動作、映画やテレビ、ネットの動画といった視覚的なものについては使いません。
その場合は「拝見する」が適切でしょう。
「拝聴する」は前述のように謙譲語ですので、自分を低くして相手を高める表現です。
このため自分のことを表す時に用い、他人が「聞くこと」を表すときは使用しないことにも注意が必要です。
例えば「この案件について拝聴されましたか」などと相手に聞くのは誤用になります。
また「ご拝聴したい」といった「ご~する」の形も、二重敬語に当たるため適切ではありません。
「拝聴」自体にすでに謙譲の意味が含まれているため、「ぜひお話を拝聴したいです」で十分な敬語表現となります。
「拝聴する」の類語と例文を教えて?
最後に「拝聴する」の類語と例文をご紹介します。
「拝聴する」の類語には、次のようなものがあります。
◆類語
- 謦咳に接する
- 謹聴する
- 傾聴する
- 静聴する
- 清聴する
- 耳を傾ける
- 承る
- 拝承する
- 伺う
- 敬聴する
- 拝聞する
などがあります。
「拝聴する」の例文としては、次のようなものが挙げられます。
◆例文
- 会長のお話を直接拝聴できますことを、心から楽しみにしております。
- 先日は先生のご高話を拝聴することができ、大変光栄でした。
- 先日の講演では大変興味深いお話を拝聴いたしまして、誠に感謝申し上げます。
「拝聴する」の類語と例文をまとめてご紹介しました。
まとめ
いかがでしたか。
「拝聴する」の意味と使い方、そして敬語や類語、例文について詳しくご紹介しました。
おさらいをすると「拝聴する」はビジネスシーンや公の場でつつじんで聴くことを意味し、相手の意見や話しを聞いた後に感謝の思いを敬って述べる言葉になります。
ビジネスの場などでもよく使う言葉なので頭に入れておくと良いでしょう。