「捨てがたい」という言葉をよく耳にする機会があると思います。
例えば「どちらも捨てがたい」や「どっちも捨てがたいんだよなぁ」など使ったり聞いたりしますよね。
そんな本日は「捨てがたい」の意味と使い方、そして類義語や言い換え方について詳しく解説したいと思います。
「捨てがたい」の意味は?
まず最初に「捨てがたい」の意味を見ていきましょう。
「捨てがたい」という語句は、「捨てる」という動詞に「~かたし」という接尾辞がついたものです。
「かたし」は形容詞の「難い」からきており、濁音化して「がたい」となるのが通例です。
動詞の連用形について、その動作が困難であることを示します。
つまり「~しにくい」、「~するのが難しい」といった意味合いとなります。
「捨てる」という動詞は、かなり幅広い使われ方をする言葉です。
最も一般的な用例は「不要なものとして、手から離す、投棄する」といった意味です。
それが転じて、抽象的、精神的な表現でもしばしば使われます。
「放置する」、「見過ごす」、「選択肢として除外する」。
あるいは「これまでの熱意や関心が冷めてしまう」、「あきらめる」といった意味合いです。
「妻子を捨てる」、「フォークボールを捨てて直球に絞る」、「希望を捨てる」などが文例です。
また「俗世間を離れる」、「大事なものを犠牲にしてもよい覚悟で、何かを行う」といった使い方もあります。
「世捨て人」、「この命を捨ててもいい」などです。
「レンタカーを乗り捨てる」、「切って捨てる」など、動作を放置するような接続的な用法もあります。
このように、何かを手離したりあきらめたりする行為全般が「捨てる」であり、「捨てがたい」は本来の意味からすると「捨てることが難しい」、「捨てにくい」、すなわち「(何かを)手放したり、あきらめたりすることが困難だ」といったことになります。
ただ、「捨てがたい」を実際に文脈上で使う場合をみてみると、「~しにくい」など逡巡しているさまを表すというよりも、むしろ「とてもじゃないが、捨てることなどできない」、「捨てられるはずがない」といった強い意志を示すニュアンスが多いようです。
例えば「大谷翔平選手の二刀流の実力を目の当たりにすると、投手も打者もどちらも捨てがたい」、「愛着ある服ばかりだから、どうにも捨てがたい」などといった言い方です。
こうしたニュアンスを強く感じるのは、「~がたい」という表現に理由があるようです。
「捨てがたい」の正しい使い方は?
次に「捨てがたい」の正しい使い方について見ていきましょう。
日本語で「あることを行うのが困難だ」という趣旨を表す表現には、「~がたい」のほか「~しづらい」、「~しにくい」、「~しかねる」などがあります。
これらはそれぞれが全く同じ意味合いというわけではなく、ある程度の使い分けがなされる言葉だといえます。
まず「しがたい」は、他の言い方に比べてやや文語的な堅めの表現であるといえます。
そして「しがたい」は概して心理的、抽象的なものごとに関して使われるという特徴があります。
論理的、客観的判断に基づいて、それを行うことに心理的抵抗があり、踏み切ることができない、といったイメージです。
これに対し「しづらい」、「しにくい」は物理的や技術的に困難な場合を示すことが多いようです。
あるいは感覚的、主観的にそう思われる用法だといえます。
「食べづらい」、「噛みにくい」といった使い方です。
また「しかねる」は心理的、物理的の別なく、「できない」や「難しい」ということをソフトに表す言い方だといえます。
このように、あれこれと総合的に推考して「困難」と結論づけているのが「しがたい」ですので、「あまりにも度を超えていて、やろうとしても、最初から到底できるものではない」といった印象が強調されている表現だといえます。
「離れがたい恋仲」、「曰く言い難い」などが文例です。
「捨てがたい」もそうしたニュアンスがこもるといえますので、客観的な判断から「基本的に、捨てるのは不可能だ」という意味合いを持たせる場合に使うのが正しい用例だといえます。
ゴミ捨て場が遠すぎて捨てるのが面倒だ、といった「物理的」条件の場合は「捨てづらい」や「捨てにくい」、あるものに関して、誰がどう見ても捨てるのはおかしい、間違っているという趣旨であれば「捨てがたい」を選択する、ということになります。
「捨てがたい」の類義語と言い換え方は?
最後に「捨てがたい」の類義語と言い換え方についてご紹介します。
「捨てがたい」の類義語や言い換え方としては、次のような例が挙げられるでしょう。
- 非常にもったいない
- 捨て切れない
- 捨てるには惜しい
- 是非とも残したい
- 何とか救いたい
- とどめおきたい
- 助けたい
- 尊重したい
- 保護したい
- 保存したい
- 決しがたい
- どちらとも選べない
「捨てがたい」の類義語と言い換え方をまとめてご紹介しました。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
「捨てがたい」の意味と使い方、そして類義語や言い換え方について詳しくご紹介しました。
おさらいをすると「捨てがたい」の意味は「捨てるのは不可能だ」「捨てるのがもったいない」というニュアンスがあります。
日本語の奥深さと難しさを改めて認識することが出来たと思います。