よくニュースや新聞などを読んでいると「慰留(いりゅう)」という言葉を見かけることがあります。
「慰留に努める」や「退職慰留」なんて言葉を聞いたことありませんか?
よく見聞きする言葉なんですが、いまいち言葉の意味を理解していない…なんてことがあると思います。
そんな本日は「慰留」の読み方と意味、そして使い方や類語、例文について詳しく解説していきたいと思います。
「慰留」の読み方と意味は?
まず最初に「慰留」の読み方と意味について見ていきましょう。
「慰留」という言葉は「慰」と「留」という字から成り立つ熟語で【いりゅう】と読みます。
「慰」は、形声文字で「心」が形を表し、「尉」が音を示します。
「尉」とはそもそもは「火熨斗(ひのし)」のことを意味したとされます。
「火熨斗」とは、昔の布地のしわを伸ばすための道具で、底の平らな金属製の器に木の柄をつけたものです。
中に炭火を入れて熱し、布地にあてることでしわが伸びます。
今で言うアイロンですね。
ここから「尉」は上から押さえつけるもの、の意味を示しました。
つまり「慰」は「心を押さえつけて落ち着かせること」という含意の字です。
これが転じて「なぐさめる」、あるいは「人を楽しませる」、「人の悲しさや苦しさをいたわる」といった意味を示すようになりました。
「留」も形声文字で、元来は「畑仕事をとめること」を指し、転じて「とめる」、「同じ状態でいる」、「引き留める」といった意味合いを示します。
こうしたことから「慰留」は、「ある行動をとろうとする人を、やめるよう引き留める」という意味を表す言葉となります。
ただその中でも「慰留」は、人の職業や社会的な地位に特定して使われる表現だといえます。
具体的には、「現在就いている地位を退こうとする人を、なだめて思いとどまらせること」を示す名詞です。
「慰留」の使い方は?
次に「慰留(いりゅう)」の正しい使い方を見ていきましょう。
「慰留」という言葉は、前述のようにある人の社会的な地位について、辞任しようとする行為をやめさせようとすることを意味します。
表現の仕方としては、「慰留する」、「慰留に努める」、「慰留を働きかける」など、後ろに動詞を補って使うことが一般的です。
「慰留交渉」、「退職慰留」など、複合した熟語としても用いられます。
比較的堅い、あらたまった言い方であり、主としてはビジネスシーンや交渉事などの公的な場面で使われる表現だといえるでしょう。
会社や店舗、工場などの職場では、一般的に使用される表現です。
「慰留に努める」の意味は?
例えば「慰留に努める」という言い方は、その職場での退職希望者や、上司に退職を申し出た者に対して、「考えを変えるよう説得し、辞職せずに職場に引き留めるよう努力する」ことを表します。
「慰留に努める」という表現方法もよく見聞きする言葉なので覚えておきましょう。
「退職慰留」の意味は?
「退職慰留」という表現も、ビジネスマンやOLの間ではよく耳にします。
やはり「退職しようとする社員を、辞めないよう引き留める」行動を示します。
このほかニュースなどでは「慰留交渉」や「慰留工作」といった言葉もよく聞かれます。
ビジネスや契約交渉の場で、人材の引き抜きや抜擢、ヘッドハンティングの駆け引きなどにおいて、こうした表現で「慰留」はよく使用されます。
ビジネスのみならず、政治や芸能、スポーツなどの世界でも、離党や脱退、独立、解雇、契約といったように、有能な人材めぐる交渉や人の行き来は頻繁にありますが、こうした場面でも使われる言葉です。
なお「慰留」はやや堅い表現ですから、逆に身近なシーンではあまり使用されません。
「囲碁クラブを抜ける人を慰留する」、「宴会を中座しようとしたら慰留された」などという表現はあまり一般的ではないといえるでしょう。
「慰留」の類語と例文を教えて?
最後に「慰留」の類語と例文をご紹介したいと思います。
「慰留(する)」の類語には次のようなものがあります。
◆類語
- 思いとどまらせる
- 引き止める
- 考え直させる
- 説得する
- 再考を促す
- すがって止める
- すがりつく
- 泣きつく
- 懇願する
などがあります。
「慰留」の例文には次のようなものが挙げられます。
◆例文
- 辞意を表明した会長を慰留する。
- 監督が辞任を申し出たとは寝耳に水だ。これから何とか慰留に努めたい。
- 慰留していただくのは大変ありがたいが、熟考した上でのことであり、決心は変わらない。
「慰留」の類語と例文をまとめてご紹介しました。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
「慰留(いりゅう)」の読み方と意味、そして使い方と類語、例文について詳しくご紹介しました。
おさらいすると「行動を起こそうとした人を引き止める」ことを”慰留”と言い、ビジネスシーンなどで主に使う表現方法ということを覚えておきましょう。