ビジネスの場でよく使う言葉として「ご持参ください」という表現方法があります。
何気なく使っている「ご持参ください」という言葉ですが、敬語として合っているのか、間違っているのか考えたことはありますか?
そんな本日は「ご持参ください」は敬語として間違っているのか?そして意味や正しい使い方について詳しく解説したいと思います。
「ご持参ください」の意味と使い方は?
まず最初に「ご持参ください」の意味と正しい使い方について見ていきましょう。
「ご持参ください」という語句は、漢語につく丁寧の接頭辞「ご」、名詞の「持参」、そして、相手に丁寧に要請や懇願する場合の補助動詞「ください」が連なった構成です。
「持参」の「持」という漢字は形声文字です。
てへんに「寺」から成っています。
てへんはこの字の形を、「寺」が音を示します。
「寺」にはもともと、「仕事をする」という意味があります。
すなわち「持」は「手が仕事すること」を意味し、転じて「持つ」ことになったとされます。
また「参」は本来の意味合いは「謁見する」、「交わる」といったことですが、日本語では特有の使い方として、「行くこと」、「すること」の敬語表現や謙譲表現としても使われる字です。
このように「持参」は、「持って参る」という意味合いから、「ある場所へ品物や金銭を携行すること、持っていくこと」、あるいは「ある場所から取ってくる、持ってくること」を示す言葉だといえます。
そして「ご持参ください」は、一般には、相手に特定のものを指定の場所へ持って行ってほしい、あるいは持って来てほしい場合に、丁寧にそのことを要請する言い方です。
ビジネスシーンでの会議や日常の集会などのイベント、学校や団体の会合などで、主催者側が参加者に向けて、当日に必要な用具などを携行してきてほしい際に、事前に文書等で「当日は○○をご持参ください」と連絡するといった使い方が通例です。
「ご持参ください」は敬語として間違い?
次に「ご持参ください」という表現方法は敬語として間違っているのか見て行きましょう。
「ご持参ください」は、前述のように日常の場面ではよく耳にする表現ですが、一部には「敬語として間違いではないか」といった指摘も聞かれます。
その背景には、「敬語の重なり」や「尊敬語と謙譲語の混在」といった、正しい敬語表現では不適切とされる使い方が、この語句に含まれるという見方があるようです。
まず敬語の重なり、すなわち「二重敬語」の問題について考えてみます。
そもそも「ご持参」は相手を立てる尊敬語だと考えられます。
自分が持って行くことをへりくだって言う場合には通常使わないからです。
この点、例えば「ご説明」であれば尊敬語でも謙譲語でも両方に使用されます。
二重敬語とは、一つの文に同じ種類の敬語を二重に使う言い方です。
例えば「お読みになられる」などで、一般には不適切とされますが、一部には習慣として定着した表現もあり、判断は難しいところです。
「お見えになる」などは定着した言い方の一例だといえます。
この点で「ご持参ください」は二重敬語には当たらないと考えられます。
これを仮に「ご持参なさってください」などとすれば、過剰な敬語であり不適切でしょう。
次に尊敬語と謙譲語の混在について考えます。
「持参」は前述のように「参る」という「行く」の謙譲表現が含まれています。
このため「持って参ってください」という言い方になり、おかしいのではないか、という見方があります。
日本語の敬語は社会的に不可欠な表現ですが、使い分けは大変複雑で難しいものです。
このため、分かりやすいガイドラインを作ろうと数年前、文化庁が国語関係の有識者を集め「敬語の指針」をまとめました。
それによると「御持参ください」や「お申し出ください」といった表現の中に含まれる「参る」や「申す」は、謙譲語としての働きは持っていない、と指摘しています。
さきほどもご説明したように、そもそも「ご持参」は尊敬語であり、へりくだった言い方の文脈では使われません。
ほかにも、「お申し込み」や「ご参加」などの言葉にも、へりくだる働きはないといえます。
このため文化庁の指針は、「ご持参ください」を相手側の行為に用いるのは問題ないとしています。
ただしこの表現が気になる人もいるため、その場合には「お持ちください」などと言い換えることを推奨しています。
「ご持参ください」の例文を教えて?
最後に「ご持参ください」の例文をいくつかご紹介したいと思います。
「ご持参ください」の例文としては、次のようなものが挙げられます。
◆例文
- 車検の日は、忘れずに印鑑をご持参ください。
- 会場には筆記用具をご持参ください。
- 恐れ入りますが、当日はスリッパをご持参ください。
- あすの会議ではこの資料をご持参ください。
ビジネスの場で活用する場合は是非、参考にしてみてください。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
「ご持参ください」は敬語として間違っているのか?そして意味や正しい使い方について詳しくご紹介しました。
こうやってひとつひとつ詳しく調べてみると日本語の難しさを改めて実感しますね。
「ご持参ください」の敬語に関してはそこまで過敏にならなくても良いとは思いますが、気になる方は「お持ちください」などに言い換えて使うと良いでしょう。