普段の会話で「○○でございますね」という言葉使いをしている人は結構いると思います。
というか誰でも一度は「~でございますね」と使ったことはあると思います。それほど、日常会話の中でよく使う表現方法と言える言葉だからですね。
そんな本日は「○○でございますね」という表現方法は間違いなのか?さらに、敬語や丁寧語、そして正しく表現する場合にはどうしたらいいのかを詳しく解説したいと思います。
「○○でございますね」の意味と使い方は?
まず最初に「○○でございますね」の意味と正しい使い方について見ていきましょう。
「○○でございますね」という表現は、「ございます」と「ね」という語句に分割できます。
「ございます」とは、動詞「ござる」に敬語をつくる助動詞「ます」が付いた、「ござります」が転じたものとされます。
「ござる」は時代劇などでもよく聞くように、近世江戸時代以前の言葉です。
このため「ござります」も近世以降に使われるようになった語とされています。
さて「ござる」は漢字では「御座る」と書きます。
これはさらに古い中世の「ござある」が転じたものといわれます。
「ある」や「いる」という意味の尊敬語であり、他人に対する待遇の際によく用いられ、尊敬語にも丁寧語にもなります。
また「ござある」はさらに起源をたどると、「あり」の尊敬の動詞である「おはします」に行き着きます。
つまり「ござある」は、「おはす」の漢字表記である「御座」を音読みし、「あり」を付けた語です。
鎌倉時代から使われるようになり、室町時代ごろからは終止形が「ござある」となり、さらに「ござる」につまったとされています。
これが現代の「ございます」の「ござい」に残っているわけです。
現代日本語では非常に一般的な丁寧語「ございます」も「します」も、元は古語の「おはします」から由来しているというのは、興味深いことですね。
このように「ございます」は「ある」の尊敬表現なわけですが、使用の際は「~で(あるいは「~て」)ございます」という形になるのが通例です。
形容詞、形容動詞の連用形に続けて使われます。
類似の語尾の敬語表現「あります」や「です」よりさらに丁寧な言い方で、あらたまった会話や文面で使います。
これに「ね」という問いかけや同意、強調などを示す終助詞をつけたのが「○○でございますね」になります。
これは相手に対し、丁寧に事実を念押ししたり、問いかけたりする言い方です。現在ではやや古風な印象もある用法です。
「○○でございますね」の敬語や丁寧語は?
次に「○○でございますね」の敬語や丁寧語について見ていきましょう。
このように「○○でございますね」は丁寧語であり、文法的には間違った用法ではありません。
このため、目上の相手などに用いても差し支えないように考えられますが、実際にはやや不自然さが伴います。
例えば、あいさつで「お暑うございますね」などと定型的に述べる言い方は定着していますが、相手に「失礼ですが、田中様でございますね」と尋ねるのは、やや違和感も残ります。
この場合は「田中様でいらっしゃいますね」の方がしっくりくるようです。
これは、「○○でございます」と「○○でいらっしゃる」の敬語としての性質の違いが理由の一つと考えられます。
丁寧語の「でございます」は、話し手の発話態度が丁寧であることを示すことによって相手への敬意を表すものです。
これに対し「でいらっしゃる」は尊敬語であり、主語となる相手を直接的に高めるものです。
このため、相手に対して尊敬の念を示す場合は「いらっしゃる」がより適切といえるでしょう。
つまり「でございます」は自分の行動を丁寧にする言葉なので、相手の行動を尋ねる「ございますね」と疑問形にすることで、不自然になってしまうわけです。
また、「でございます」は、「である」の丁寧語である「です」よりさらに丁寧な形式です。
自分に関して最も丁寧な形式を用いていながら、尊敬語を使わずに相手に聞く、という矛盾が、「○○でございますね」の違和感の要因ともいえるでしょう。
「○○でございますね」の例文を教えて?
最後に「○○でございますね」の例文をご紹介したいと思います。
前述のことから、「○○でございますね」を使用する際は、疑問文ではなく、念押しや確認、強調の文としての用法が適切だといえます。
例文としては、次のようなものが挙げられます。
◆例文
- こちらがお探しの商品でございますね。
- 今回の作品は、実に素晴らしい仕上がりでございますね。
- 分かりにくいのですが、よく見るとここに染みがございますね。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
「○○でございますね」は間違いなのか?さらに敬語や丁寧語、そして正しく表現するにはどうしたらいいのかについて詳しくご紹介しました。
おさらいをすると「~ございますね」は文法的には間違っていませんが、使い方を間違えると違和感が生じてしまう表現方法ということが分かりました。
使う場面や相手をしっかりと見極めて、正しく表現したいものですね。