みなさんは普段、「忸怩(じくじ)たる思い」という言葉を見聞きしたり使ったりしますか?
よくニュースなどで芸能人が不祥事を起こした場合に「忸怩たる思い」という言葉を使っているのを聞いたりしますね。
ただ、意味や使い方を問われると正直、即答するのは難しいと思います。
そんな本日は「忸怩たる思い」の詳しい意味と正しい使い方、そして類語や例文、誤用について詳しく解説していきます。
「忸怩たる思い」の意味と使い方は?
まず最初に「忸怩たる思い」の意味と使い方について見ていきましょう。
念の為に読み方は「忸怩たる思い」と書いて【じくじたるおもい】と読みます。
「忸怩たる思い」という表現は、「忸怩」という熟語と、「たる」という助動詞、「思い」という名詞から成り立っています。
「忸怩」の「忸」、「怩」という漢字はいずれも、「心」や「感情」を示すりっしんべんに、音を示すつくりの字によってできています。
この両方の字とも「恥ずかしい」という意味を表します。
このうち「忸」は「慣れてしまい、相手をあなどる」という意味も持ちますが、それが転じて「恥じ入る」という意味合いになったようです。
次の「たる」は「~たり」という助動詞の連体形です。
あるものごとを「~である」と強調する、やや文語的な言い方ですね。
こうしたことから、「忸怩たる思い」は、「自分の行いについて、心の中で恥じ入るさま」や「内心で恥ずかしく思う」ことを示します。
「忸怩たる思い」は、主に自分の行動、状態について言い表す際の言葉です。
自らの失敗や至らなさについて、へりくだった形で、「非常に恥じ入っています」と相手に申し訳を述べる表現だといえます。
そして、ややいかめしい、大仰な言い方だともいえます。
同じ「恥ずかしいさま」を表す言葉だとしても、「照れる」、「面はゆい」といった、日常のちょっとした出来事、ささやかな場面に適した言葉とはニュアンスがかなり異なります。
例えば「和服が意外に似合うとほめてもらい、少し照れるなあ」といった文章では、「忸怩たる思いだなあ」と言い換えると、重々しすぎてちょっとふさわしくありません。
やはり政治や外交、会社の経営、人生の岐路といった重大な問題を述べる場面で使用するのが適切な表現だといえます。
なお「忸怩たる思い」は、けんそんする表現の一つといえますので、相手、他者の行動について語るときには通常は使いません。
「忸怩たる思い」の類語と例文が気になる!
次に「忸怩たる思い」の類語と例文を見ていきましょう。
「忸怩たる思い」の類語には、次のようなものがあります。
◆類語
- 恥じ入る
- はにかむ
- 赤面する
- 顔から火が出る
- 面はゆい
- ばつが悪い
- こそばゆい
より重々しく「恥」を強調する言い方では、「ざんきに堪えない」、「面目次第もない」、「汗顔の至りだ」、「顔向けできない」、「立つ瀬がない」といった言い方が近いでしょう。
「忸怩たる思い」の例文としては次のようなものが挙げられます。
◆例文
- このたび伝統ある我が社を倒産に至らせてしまい、社長としてまことに忸怩たる思いです。
- 多くの同志が落選する結果となり、選挙の責任者として忸怩たる思いでございます。
- 若気の至りとはいえ、あの頃の無鉄砲さには、まったく忸怩たる思いがする。
「忸怩たる思い」の類語と例文は以上となります。
もし私生活で使う場合は是非、参考にしてみてくださいね。
「忸怩たる思い」の誤用について!
最後に「忸怩たる思い」の誤用について見ていきましょう。
「忸怩たる思い」は前述のように、「自分の行為について内心で恥じ入るさま」を表します。
このため「悔しい」、「腹が立つ」、「憤りを感じる」といった場合の表現としては正確ではありません。
これらの言葉は、文脈上では一見するとあまり違いが感じられないことが多い表現だといえます。
仮にある人が「私の渾身の作品が評価されず、まことに忸怩たる思いだ」と言ったとします。
「忸怩」の意味をつかんでいないと、この場合、話し手の感情が「恥ずかしい」とも「悔しい」とも「腹が立つ」とも受け取れてしまいます。
しかし正しくは「恥じ入っている」という意味であることに留意して、実際には使用したり、理解することが大切ですね。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
「忸怩たる思い」の詳しい意味と正しい使い方、そして類語や例文、誤用について詳しくご紹介しました。
私生活の中、主にビジネスシーンなどで活用する場合は少々、重たく畏まった表現方法となってしまうので、使うシーンをしっかり選ぶ必要がある言葉だと思いますね。