みなさんは「踏襲」という漢字の読み方は分かりますか?
よく「踏襲する」や「前例踏襲」という言葉をニュースなどで見聞きしたりしますが、どんな意味合いがある言葉なのでしょうか。
そんな本日は「踏襲」の読み方と意味、そして使い方と類語、例文について詳しく解説したいと思います。
「踏襲」の読み方と意味は?
まず最初に「踏襲」の読み方と意味について見ていきましょう。
「踏襲」という熟語は【とうしゅう】と読みます。
通常は名詞として使うか、後ろに「する」という動詞を補って用います。
読み方としてはやや難読の部類に入るかもしれません。
少し脱線しますが、現在から数代前のある総理大臣が、演説原稿の中の「踏襲」を「ふしゅう」と読み間違え、「先進国の首相たる人が漢字も読めない」と話題になったことがありました。
「踏襲」の「踏」が「踏(ふ)む」という訓読みのため、引きずられたのでしょうか。
ちなみにこの首相、「頻繁(ひんぱん)」を「はんざつ」、「未曽有(みぞう)」を「みぞうゆう」など、他にも多く読み間違えておられました。
私たちも、公の場などでの漢字の誤読には注意したいものです。
さて「踏襲」の「踏」は形声文字で、足が形を、沓が音を表します。
「沓」は水と曰を合わせた字で「水のように次々としゃべって絶えないこと」を元来示します。
ここから「足を次々と動かすこと」との意味に転じ、さらに「踏む」の意味になったようです。
さらには「踏み台」や「基礎」、「見定める」、「同じ道を歩む」といった趣旨の用例にも広がりました。
「踏まえる」という言葉が同じ用法です。
次に「襲」も形声文字で、衣と龍を合わせた形です。
龍は音を表します。
そもそもは「納棺の前に死者の上に重ねてかける打ち掛け」のことを指したとされます。
そこから「前のものの後にそって重ねる」といった意味合いに転じました。
「後を継ぐ」、「重ね合わせる」という意味ですね。
なおこの字は、人の衣服の上に龍が乗った形にも見えることから、「襲う」、「不意に攻めかかる」という意味合いでも使われています。
ただ「踏襲」の場合は、「襲名」、「世襲」などと同じく「後を継ぐ」といった用法です。
これらのことから、「踏襲」は「前の人のやり方などをそのまま受け継ぐこと」や「元の形のまま使うこと」を意味します。
「踏襲」の正しい使い方は?
次に「踏襲(とうしゅう)」の正しい使い方について見ていきましょう。
「踏襲」は「やり方や方針を継続する、受け継ぐ」といった意味を幅広く示す名詞です。
ビジネスシーンやニュース用語などでは、「前例を踏襲する」、あるいはそのまま「前例踏襲」といった四字熟語の形でもよく使われます。
これは「前例に倣うこと」、「先例を受け継ぐこと」という意味で、「前例踏襲主義」など、やや悪い意義付けで使用されることもあります。
「学問や仕事などで、ただ前例をまねすることにとらわれるやり方」といった用例です。
伝統を重んじることは大事ですが、時代や技術の変遷に伴って、物事は常に改善や改革が求められるものです。
しかし仮に前例に問題点があっても、「受け継ぐこと」だけを優先して、変革を先送りにするような考え方については、批判的な意味合いで「踏襲」と使われることがあります。
その意味では、「踏襲」の類語である「継承」という言葉を使うと、ポジティブな印象を受けます。
これは「前人の身分・財産・任務などを受け継ぐ」といった意味で、「良い部分だけをまねる」といったニュアンスになるからです。
一方「踏襲」は地位や財産などではなく、あくまで「考え方」や「やり方」を引き継ぐという趣旨です。
ビジネスでは「仕様」や「方針」といったことを指すといえます。
このように「踏襲」はビジネスのほか、演説や講演、授業などではよく使われる、やや堅い文章語だといえます。
「踏襲」の類語と例文も教えて?
最後に「踏襲」の類語と例文をご紹介したいと思います。
「踏襲」の類語には次のようなものがあります。
◆類語
- 従うこと
- 則ること
- 準拠
- 傚うこと
などがありますね。
「踏襲」の例文は次の通りです。
◆例文
- 我が社の伝統的なやり方を踏襲するのは間違いではない。
- 馴染みあるデザインだけは踏襲し、機能は改良を施した。
- 創業者の思想は踏襲しつつ、よい製品づくりへ開発を続けたい。
「踏襲」の類語と例文をまとめてご紹介しました。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
「踏襲」の読み方と意味、そして正しい使い方と類語、例文について詳しくご紹介しました。
おさらいをすると「踏襲」とは”前の人のやり方をそのまま引き継ぐ”という意味合いがありますね。
「踏襲する」や「前例踏襲」などと使うことが多い表現方法です。