ノートに文字を書いている

みなさんは日々の生活の中で「取り付く島もない」という言葉を見聞きしたことがありますか?

「取り付く島もない」と同じような表現で「取り付く暇もない」という言葉も見聞きしたことがあると思います。

「取り付く島もない」「取り付く暇もない」、この2つの言葉はとてもよく似ていますが、どちらが正しい表現方法なのでしょうか…気になりますよね?

そんな本日は「取り付く島(暇)もない」という表現方法は間違いなのか?そして意味や正しい使い方、語源について詳しく解説していきます。

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「取り付く島もない」の意味や使い方は?

まず最初に「取り付く島(暇)もない」の意味と正しい使い方について見ていきましょう。

とその前に、ご指摘しなければなりませんが、この項目のテーマである「取り付く暇もない」という語句は、日本語として間違いです。

正しくは「取り付く島もない」という言い方となります。

「暇」と「島」の発音が似ているための誤用と考えられます。

先にこの語句の意味を説明すると「相手の態度が荒々しかったり冷淡だったりして、話し合う余地がない様子」「何かを頼んだり相談しようとしても、相手の態度が冷たくきっかけがつかめないこと」となります。

こうした「取り付く島もない」という語句の意味が、ニュアンス上「島」よりもむしろ「暇」を連想させることが、取り違えの要因になっているようです。

「相手のガードが固く入り込む隙がない」とか、「相手の対応が無愛想で話の糸口が見いだせない」という趣旨ですから、確かに何となく「暇がない」の方がしっくりくる印象もあります。

実はこれは、国の世論調査でも裏付けられています。

文化庁の「国語に関する世論調査」によると、「つっけんどんで相手を顧みる態度が見られないこと」を表す慣用句はどちらかという問いに対し、「取り付く島がない」を選んだ人が47.8%、「取り付く暇がない」と答えた人が41.6%とほぼ拮抗しているのです。

言葉が、時代によって元の意味を離れ、使われ方も変遷することがある、という一例ともいえるでしょう。

「取り付く島もない」の語源は?

伝える

次に「取り付く島もない」の語源について見ていきましょう。

「取り付く島もない」の「取り付く」は、「取る」と「付く」という語が連結した動詞です。

「取る=自分のものにする」と「付く=離れないでいる」の合体形ですから、「しっかりとつかまる、すがりつく、とりすがる」といった意味を示します。

なお「取り付く」には「新しく物事を始める、着手する」とか「きっかけをつかむ、手掛かりを得る」といった意味合いもあります。

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例えば「これは取り付きようもない難問だ」などといった用法です。

また漢字では「取り憑く」と書いて、「心霊や魔物が乗り移る」、「つきものがつく」や、「ある感情などが根付いて離れなくなる」という趣旨を表す場合もあります。

「強迫観念に取り憑かれる」といった用例です。

 

次に「島」ですが、この漢字は形声文字で、海中に出ている山に鳥が止まって休んでいるさまを表しているともされます。

すなわち、本来の意味は「周りを水や海に囲まれた陸地」のことです。

このように「取り付く島もない」は、直接的には「すがりつく島さえない」という意味になります。

語源としては、「船で航海に出たものの、近くに立ち寄れるような島がなく、休息すら取れない」といった状況を、手掛かりがなく困り果てた様子に例えたとの説があります。

実際、江戸時代の浮世草子作者、井原西鶴の「日本永代蔵」にも「取り付く島がないような舟には乗せまい」といった意味のくだりがあります。

ただ、以前は「頼る島もない」の形で使われることもあったようです。

このため「島」とは、「海に浮かぶ陸地」のことではなく、「頼みとする事柄」や「助けとなるよすが」を例えたもので、「取り付く島もない」は「頼れる所がない」という慣用的言い方である、との見方もあります。

「取り付く暇もない」は間違い表現で「取り付く島もない」が正しい!

最後に「取り付く暇もない」は間違い表現で「取り付く島もない」が正しい表現方法について見ていきましょう。

これまで述べたように「取り付く暇もない」は「取り付く島もない」の誤用表現だといえます。

ただ現実的には、一般社会での使用例は両方が相半ばしており、文章で書いたり、口頭で話す際には悩まれる方も多いでしょう。

「取り付く暇もない」は、文字通りには「すがりつく時間がない」という意味であり、確かに「相手が、説得する時間さえもくれない」というイメージを表せます。

しかし「取り付く島もない」は、時間ではなく「相手のけんもほろろな冷たい態度」を指すのが本来の意味ですから、公の場やビジネス文などでは、正しく表記する方が望ましいでしょう。

例文を挙げると「借金を申し込んだが、取り付く島もなかった」、「何とか考え直すよう話したが、取り付く島もなかった」などとなります。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

「取り付く暇もない」「取り付く島もない」の意味や正しい使い方、そして語源などについて詳しくご紹介しました。

両方の表現方法は聞き間違いから起こる誤用だったということが考えられるということでした。

正確には「取り付く島もない」が正しく、「取り付く暇もない」は間違いということです。

ですが、口頭などで相手に伝える場合に「取り付く暇もない」という表現方法も存在しますので、全てが間違いというわけではありません。

公の場やビジネスシーンでは「取り付く島もない」と正しい表現方法で使いましょう!

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