普段、ビジネスの場に限らず「為さる(なさる)」という表現方法を見聞きしたり、使ったりする機会があると思います。
ですが、「為さる(なさる)」と聞いてどんな意味合いのある言葉なのか、そして正しい使い方について気になってしまいますよね。
そんな本日は「為さる(なさる)」の意味と正しい使い方、そして敬語や謙譲語、尊敬語について詳しく解説したいと思います。
「為さる(なさる)」の意味と使い方は?
まず最初に「為さる(なさる)」の意味と正しい使い方を見ていきましょう。
「為さる」という言葉は、「する」や「なす」という動詞の尊敬語です。
「為さる」の「為」という漢字は、会意文字です。
これは「手」と「象」の形からできているとされ、「人が象を飼い慣らす」ことをそもそもは示したということです。
ここからあることを「実施する」という意味合いに転じました。
「する」とは「ある行為を行う」ことが基本的な意味合いですが、「なす」は、「する」と同じ用法のほかに、「あるまとまったものを作り上げる」、「あるものを別の状態に変える」といった意味も持ちます。
例えば「成す」という漢字を当てれば、「ある状態を生み出す」ことを意味し、「石油で財を成す」、「群れを成す」などと用います。
また「子を生す」といえば「子を産む」ということです。
「行う」という意味では「なせば成る」、「なすがままに」といった慣用的表現も多くあります。
ただ「為さる」という尊敬の表現の場合は、一般には通常の「ものごとを行う」という行為について、相手を敬って使われるといえるでしょう。
相手の何かを「する」行動を尊敬を込めて述べる言い方が「為さる」であり、「あそばす」、「される」といった類語と同様な使い方をします。
「為さる(なさる)」の敬語や謙譲語・尊敬語は?
次に「為さる(なさる)」の敬語や謙譲語・尊敬語を見ていきましょう。
「なさる」はそれ自体が「する」の尊敬語であり敬語表現ですが、相手の動作を示す動詞の連用形や、動作性の漢語名詞につけて、補助動詞として尊敬の形をつくることもあります。
その場合は文頭には丁寧な意味を示す接頭語「お」、「ご」を通例付します。
「休む」といった和語の場合は「お休みなさる」となり、「休憩」といった漢語名詞の場合は「ご休憩なさる」となります。
これは同じく補助動詞を使った尊敬表現である「お(ご)~になる」と似ていますが、「お(ご)~なさる」の方が古くから存在した言葉遣いであり、より古風な、改まった言い方だといえるでしょう。
また「為さる」に、丁寧な接尾語「ます」を付けることで、より敬意の念を高めた表現とすることもできます。
その場合は「為さります」よりも、一般的には「為さいます」という形となります。
相手に対する丁寧な質問の形式としては「~なさりますか」よりも「~なさいますか」が通常の形だといえます。
過去の行為を示す場合などの「て」や「た」につながるときは、「~なすって」、あるいは「~なすった」という言い方となります。
また現代の日常的な場面では使われることはまれですが、「為さる」の「命令形」ともいえる、相手に対して敬意を込めてあることを強く勧める言い方、あるいは女性が他者に命じる場合の表現としては、「~為され」や「~為さい」となります。
現代では「~なさい」が主流となっています。
「為され」はやや古風な響きが感じられ、ドラマや映画などで登場する際も「老人の言葉」といったイメージで使われることが多いようです。
「なさい」に丁寧な接頭、接尾語の「お」、「ご」と「ます」を付加した、「お(ご)~なさいます」といった使い方も現代では広く普及しています。
「為さる」は、動詞の連用形に付くときも、やはり古めかしい印象を与えるようです。
「ちょっと、どこへ行きなさる」といった用例ですが、ほぼ演劇などの世界でしか聞かれない表現といえるでしょう。
「為さる(なさる)」の例文を教えて?
「為さる(なさる)」の例文をご紹介します。
「為さる」の例文としては次のようなものが挙げられます。
◆例文
- 早くご連絡なさった方がよいでしょう。
- 明日からご旅行なさるそうですね。
- これからどんなお仕事をなさるのですか?
- そんなことくらい、ご自分でなさい。
- お黙りなさい!
- 先生はふと寂しそうな表情をなさった。
- この提案なら先方もきっとご満足なさるはずです。
- 今度の展示会にはお出でなさいますか?
「為さる(なさる)」の例文をまとめてご紹介しました。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
「為さる(なさる)」の意味と正しい使い方、そして敬語、謙譲語・尊敬語について詳しくご紹介しました。
例文を交えて使い方を知るとより一層、理解が深まると思うので是非、参考にしてくださいね。
改めて日本語の難しさと奥深さを感じると思いますよ。