みなさんは普段、「多忙を極める」という言葉をよく使いますか?
「多忙」という言葉はいろんな場面で使いますが、それに「極める」が付くとどんな意味合いを持つ言葉になるのでしょうか。そして使う場面も気になって来ますよね。
そんな本日は「多忙を極める」の意味と使い方、そして敬語や類語、例文を詳しくご紹介したいと思います。
「多忙を極める」の意味は?
まず始めに「多忙を極める」の意味を見ていきましょう。
「多忙を極める」という語句は、「多忙」(たぼう)という名詞と「極める」(きわめる)という動詞から成り立っています。
「多忙」とは「非常に忙しいこと」を示すものです。
「多」という漢字は「タ」という字が二つ重なっていますが、これは元来は「切った肉」あるいは「半月」の形を表したとされます。
それぞれ二つあることで「多い」様子を示しました。
「忙」はりっしんべんに「亡」というつくりで成り立っています。
りっしんべんは「人の心」のことを表します。
「亡」はそもそもは「人の遺体に何かのものを添えた形」を示しているとされます。
そこから「人がなくなる」や「物がない」ことを意味したようです。
「忙」は「心がない」、すなわち落ち着いた状態でいられないことを示し、転じて「忙しい」という意味で用いられるようになったとされます。
そして「極める」とは、古語では「きわむ、きはむ」と表しました。
「極」という字は左は木ヘン、右側は「上下の枠と、口、人、手の象形」を示しているとされます。
木ヘンは木や材木を示し、つくりの部分はもともと「口や手を用いて相手を問い詰める」といった意味だったようです。
このことから「極」は二つの屋根が接する「棟」や「際(きわ)」を示しました。
これが転じて「極」は「ギリギリに達する」、「最終点に至る」、「物事の終わりや根源」といった意味を表しました。
古語の「きわむ」は「極限に達する」、「終わらせる」、「尽くす」といった意味合いですが、現代の「極める」も「これより先はない地点に至る」、「この上もない程度になる」、「尽くす」などほぼ古語と同じ用いられ方になっています。
このように「多忙を極める」とは、「この上もないほど、非常に忙しい」という状況を表す言い方だといえます。
「多忙を極める」の使い方は?
次に「多忙を極める」の正しい使い方を見ていきましょう。
「多忙を極める」という語句は、ただ単に忙しいというだけでなく、「忙しさの極限状態」、「ギリギリでどうしようもないほど忙しい」といった切迫した印象を表すといえます。
日常の会話や文書のやり取り、ビジネスシーンなどでもよく使われる言い方ですが、自分の側について「最近は多忙を極めてまして」と表したり、また相手について「ご多忙を極めておられるようで」と気遣う言い方としても用いることができます。
多忙と多用の違いと使い分け
なお「多忙」の類似表現に「多用」(たよう)という言葉があります。
どちらも「多忙を極める」、「多用を極める」と使うことができます。
この使い分けは、主には結婚などの慶事で重視されます。
「忙」という字は前述のように「死」「なくなる」と関連した語源であり、慶事では「忌み言葉」としてタブーとされます。
このため慶事では「ご多用のところ」、「ご多用とは存じますが」などと言い換えるのが一般的です。
また「極める」の類似表現に「窮める」という言葉があります。
これはどちらも「極限まで行き着く」といった意味合いでは共通しており、どちらも同じように用いることができます。
「多忙を極める」の敬語・類語・例文は?
最後に「多忙を極める」の敬語と類語、例文をご紹介します。
敬語
「多忙を極める」の敬語表現は下記になります。
- ご多忙を極めておられる
- ご多忙を極めていらっしゃる
類語
「多忙を極める」の類語としては、次のようなものが挙げられます。
- とてもバタバタしている
- 非常に慌ただしい
- 猫の手も借りたいほど
- 仕事が山積している
- ゴタゴタしている
- 忙殺される
- 仕事に追われている
- 忙しさで目が回る
といった用例があります。
例文
「多忙を極める」の例文としては、次のようなものが挙げられます。
- 彼女は芸能活動が多忙を極める中でも、きちんと学校にも通っていて立派だ。
- 会社を立ち上げたころはいつまで続くかと不安でしたが、お陰様で今では多忙を極めております。
- 先生が多忙を極めておられるのは重々承知しておりますが、何とぞ今回だけは是非にお出でいただけないでしょうか。
「多忙を極める」の敬語、類語、例文をまとめてご紹介しました。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
「多忙を極める」の意味と正しい使い方、そして敬語や類語、例文を詳しくご紹介しました。
おさらいをすると「多忙を極める」の意味は忙しすぎて切羽詰まる状態のこと、忙しい状態が極限に達することを指します。
そして、「多忙を極める」と「多用を極める」は表現方法が似ていますが、使う場面が違うので注意しましょう。