普段、生活している中で「出し抜く」という言葉をよく見聞きすると思います。
「出る」という表現と「抜く」という表現が合わさった言葉ですが、どのような意味合いを持っているのでしょうか。そしてどんな場面でよく使う言葉なのかも気になると思います。
そこで「出し抜く」の意味と正しい使い方、そして語源や類語、例文を詳しくご紹介したいと思います。
「出し抜く」の意味と使い方は?
まず始めに「出し抜く」の意味と正しい使い方を見ていきましょう。
「出し抜く(だしぬく)」という言葉は動詞で、「他人の隙に乗じたり、欺いたりして、自分や自分側の組織が先に物事をなす」という意味を表します。
「他人が油断している間に、抜け目なく先駆ける」、「他人をだまして、思い違いなどをしている隙に、先回りして目的を果たしてしまう」といった意味合いであり、「小ずるく、悪賢い」といったニュアンスから、あまりいいイメージとはいえない表現です。
ただ、現在の日常会話やビジネスシーンなどでは、一般的に使われる頻度が多い言葉だともいえます。
「今回、同業者に新規契約でうまく出し抜かれた」、「週刊○○が、また驚きのスクープを出し抜いた」といった用例です。
ビジネスなどで用いる際は、相手を誹謗したり非難する意味合いというより、同じ目的で競争しているライバル同士として、相手の成功について「うまくしてやられた」と、悔しさをにじませながら評価するニュアンスがあります。
ただやはり、本来の意味合いでは「手段を選ばすに、こざかしく、先んじて目的を遂げた」といった趣旨がこもりますので、公の場や儀礼的な場所、目上の方に対してなどのケースで用いるのは望ましくありません。
決して〝褒め言葉〟ではなく、やや揶揄する言い方でもありますので、ビジネス相手に面と向かって「今回は御社にうまく出し抜かれましたよ」など言うのは、皮肉に聞こえ相手の気分を害する恐れもあります。
相手にしてみれば「うちの営業努力や商品が優れていたからこそ他社に勝ったのであって、『出し抜く』など、何か不正でもやったかのような言い方は失礼だ」と感じる懸念があるためです。
このためうかつにビジネスの場で使わないよう注意が必要です。
基本的には、仲間内で他者の仕事ぶりを評したり、利害関係のないビジネスなどの競争関係について、一般的に表現する際の言い方だといえるでしょう。
なお「出し抜く」が派生した言葉に「出し抜け」という名詞・形容動詞があります。
これは「出し抜くこと」という意味のほかに「不意に」、「突然に」といった意味も示します。
「出し抜けに声を掛けられた」、「随分出し抜けな登場だ」などの用例です。
「出し抜く」の語源が気になる!
次に「出し抜く」の語源について見ていきましょう。
「出し抜く」という言葉は、「出す」、「抜く」という動詞が複合した形で構成されています。
「出す」は元来は「いだす」という言い方が変化したものです。
「出す」にはさまざまな意味がありますが、「出し抜く」の場合は「隠れているものを表に現す」、「一目に触れるようにする」といった用法で使われているといえます。
「抜く」はこの語句の場合、「前や上位の者に追いつき、さらに前に出たり上位になったりする」、「報道などで他社に先駆けて特ダネを報じる」、「力などがほかより優れている、標準より上である」といった意味を示します。
すなわち「出し抜く」は「隠れたものを表にし、先んじる」といった原意がある言葉です。
この「出し抜く」はかなり古い時代から使われています。
鎌倉時代の説話集「十訓抄」に「終にいだしぬかれにけり」とみえるほか、同じく鎌倉期に成立したとされる「保元物語」にも「義朝はだしぬきけるよな」とあります。
意味合いとしても「約束を破って無断で先に行う」といった、現在と同じ使われ方となっています。
「出し抜く」の類語と例文を教えて?
最後に「出し抜く」の類語と例文を詳しくご紹介します。
類語
「出し抜く」の類語には次のようなものがあります。
- 先んじる
- 抜け駆けする
- 先回りする
- 裏をかく
- 先制する
- すっぱ抜く
- 飛ばす
例文
「出し抜く」の例文としては、次のようなものが挙げられます。
- ライバルを出し抜くには、相手がやらないことを考え、相手より数倍努力をしなくてはならない。
- スクープで他紙を出し抜こうとあらゆる犠牲を払い、その結果真実そのものまで犠牲にするようでは本末転倒だ。
「出し抜く」の類語と例文をまとめてご紹介しました。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
「出し抜く」の意味と正しい使い方、そして語源、類語、例文について詳しくご紹介しました。
おさらいとすると「出し抜く」の意味は競合している相手を不意に抜き去るといった表現方法で皮肉をこめた言い方になるのでビジネスシーンではあまり活用しない方がいいですね。
相手にネガティブな印象を与えてしまう表現方法なので、利用する場面をしっかり見極めてから使うようにしましょう。