みなさんは普段、「苛まれる」という言葉を見聞きしますか?
言葉だけを見るとあまり馴染みのないものに見えますがどんな場面で使う言葉なのでしょうか。読み方や意味も気になるところだと思います。
そこで「苛まれる」の意味と正しい使い方、そして類語や例文、言い換え方を詳しくご紹介したいと思います。
「苛まれる」の読み方と意味は?
まず始めに「苛まれる」の読み方と意味を見ていきましょう。
「苛まれる」という言葉は、「さいなまれる」と読みます。
これは動詞「苛む(さいなむ)」の未然形である「苛ま」に、受け身、自発、尊敬、可能などを表す助動詞「れる」が接続した形です。
「苛む」は別の漢字では「嘖む」とも書きます。
「苛む」の「苛」という字は、くさかんむりに「可」という字から成り立っています。
「可」は元来は「口の奥から大きな声を出す」という意味を示し、そこから「良い」、「結構だ」といった意味合いになりました。
ただ「苛」の場合は「呵」という字に通じることから、「大声で叱る」、「厳しく責める」といった意味に用いられるようになりました。
「苛」の意味
「苛」の字の意味はネガティブなニュアンスのものが多く、例えば、、
- つらい
- 厳しい
- むごい
- かゆい
- いらいらさせる
- 思いやりがない
- とげとげしい
- 病気になる
といった使い方で広く用いられます。
「苛」の読み方としては、「さいなむ」のほかに「苛(いじ)める」、「苛(いら)立つ」、「苛(むご)い」、「苛(わずら)わしい」といったものもあります。
このように「苛む」は「他の人に対して厳しく責める」、「叱る」、「他者を苦しめる」、「いじめる」といった意味を示します。
この受け身の形が「苛まれる」ですので、「他者やある物事から、自分の体や心が責められたり、苦しめられたりする」という趣旨を表す言葉だといえます。
「苛む」や「苛まれる」は古語が発祥の古い言葉です。
そもそもは「さきなむ」と発音され、「き」がイ音便化して「さいなむ」に変化したとされます。
平安時代の随筆「枕草子」の一節に「馬の命婦をもさいなみて…」(馬の命婦をも責め立てて)とあるほか、平安中期の物語「落窪物語」にも「かの落窪と言い立てられてさいなまれ」(あの落窪と言い立てられていじめられ)と、現代と同じ用法で使われているくだりが見られます。
「苛まれる」の正しい使い方は?
次に「苛まれる」の使い方を見ていきましょう。
「苛む」は前述のように、他者に対して責めたり叱ったりする行為を表す言い方です。
古代には、立場が上位にある者が下位の者に対して使う言葉だったとされます。
例えば有名な「源氏物語」でも「例のうっかり者が、こんな事をして叱られるのが、本当に気に入らない」と、目下の者の粗相にあきれ怒る様子を「さいなまるる」と表現しています。
ただ現代では「苛まれる」は、古語のように特定の人から叱責やいじめなどを受けることを表現して、例えば「○○さんから苛まれる」、「馬鹿だな、何をやっているんだ、とみんなから苛まれる」といったように用いることは、あまりないようです。
むしろ、もっと漠然とした観念的な事象から受けるストレスや、自分の心の動きや苦しみを内省的に表す言葉になっているといえるでしょう。
何らかの体験や出来事、過去の記憶などが原因となって、自分の肉体や精神が非常に苦しめられ、負担を感じているさまを表現する言い方だといえます。
「苛まれる」の類語と例文・言い換え方は?
最後に「苛まれる」の類語と例文、言い換え方をご紹介します。
類語と言い換え方
「苛まれる」の類語や言い換え方としては、次のような例が挙げられます。
- 悪夢に苛まれる ⇒ 悪夢にうなされる
- 熱に苛まれる ⇒ 熱に浮かされる
- 激しい悔恨に苛まれる ⇒ 苦しめられる
- 心が痛む
- 気分が落ち込む
- 押しつぶされそうだ
- 重圧を受ける
- 重荷に感じる
などがあります。
例文
「苛まれる」の例文は次のようなものが挙げられます。
- ここ数日、言いようもない不安に苛まれている。
- なぜあの時やめなかったのかと、後悔の念に苛まれる。
- この歌を聴くと暗い気持ちに苛まれる気がする。
- 絶望と煩悩に胸が苛まれる日々だ。
「苛まれる」の類語と言い換え方、例文をまとめてご紹介しました。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
「苛まれる」の意味と正しい使い方、そして類語や例文、言い換え方について詳しくご紹介しました。
おさらいをすると「苛まれる」の意味はある物ごとや他人から自分の体や心を責められたり、自分の意思とは別に苦しめられたりする様子を言います。
自分の言動や行動によっても「苛まれる」という言葉は使うので、類語や例文などと照らし合わせて頭に入れておきましょう。
「苛」という漢字自体あまり良い意味を持たないので頻繁には使いたくない言葉と言えますね。