日々の生活で「少しずつ(少しづつ)」という表現をよく使うと思います。
手紙を書く風習が少しずつなくなって来ているので、メールやLINE、個人のブログや日記などで使う場面が多いと思いますね。そんな時に「少しずつ」と「少しづつ」どちらの表現が正しいのか悩んだことはありませんか?
そこで「少しずつ」「少しづつ」のどちらが正しいのか、そして違いを詳しく解説したいと思います。
「少しずつ」「少しづつ」の意味と違いは?
まず始めに「少しずつ」「少しづつ」の意味と違いを見ていきましょう。
「少しずつ」と「少しづつ」という言葉は、いずれも「少し」という副詞と、「ずつ」あるいは「づつ」という副助詞に分けられます。
「少し」という副詞の「少」という漢字は元来「小さな点」が集まったさまを示しています。
このことから「少し」とは、「数量、程度などがわずかであるさま」を示し、主に用言を修飾します。
「ちょっと」、「やや」、「わずかに」、「若干」などとも言い換えられます。
次に「ずつ」または「づつ」という副助詞は、数量や割合を表す名詞や副詞、一部の助詞に付く言葉です。
「ある数量を等しく割り当てる」という意味を示したり、「一定量に限って同じことを繰り返す」といった意味合いを表します。
このことから「少しずつ」、「少しづつ」は「ちょっとの量や程度を繰り返して」や、「わずかだけ何度も」といったニュアンスを示す言葉だといえます。
「ずつ」は「等分に分配する」という意味合いの場合は、多くの事例では「○○(目的語)に○○ずつ分ける」といった形をとります。
例えば「三人に二個ずつ配る」、「全員にちょっとずつ行き渡るようにしなさい」などという使い方です。
「少しずつ」「少しづつ」どちらが正しい?
次に「少しずつ」「少しづつ」どちらの表現が正しいのか見ていきましょう。
「少しずつ」、「少しづつ」の「ずつ」、「づつ」という副詞ですが、これはどちらが正しいのでしょうか。
この副詞は古語から由来する古い言葉です。
そして古語では「づつ」と用いられていました。
平安時代中期の歌物語・伊勢物語には「鳥の子を十づつ十は重ぬとも」(鳥の卵を十個ずつ十だけ重ねてしまうとしても)といった用い方がみられます。
「づつ」の語源はさまざまな考え方がありますが、一説には「ひとつ、ふたつ」といった数を数える言葉の「つ」を重ねて表現したものとされます。
このため「つ」という平仮名が二つ続けられたわけです。
古語の「づつ」は現代語と同じく、分量を表す言葉の後ろに接続して「おのおのに割り当てる」や「その数だけ繰り返す」という意味を表します。
こうして見ると、歴史的には正しい表記は「づつ」ということになりますが、現代日本語では「ずつ」を原則として用いるきまりになっています。
これは戦後、政府が「現代仮名遣い」を定めたことによります。
第二次大戦までは日本語の仮名表記は「歴史的仮名遣い」と呼ばれる書き方でした。
「づつ」も古語の通り「つ」を続ける形でした。
しかし終戦直後の内閣告示で「現代仮名遣い」が定められたことにより、「づつ」は「ずつ」と書くよう一旦変更されました。
ちなみに「歴史的仮名遣い」とは、戦前まで「今日」を「けふ」、「蝶々」を「てふてふ」などと表記していた仮名遣いのことです。
これを現代国語の表記として分かりやすく改定、統一したものが現代仮名遣いです。
現代仮名遣いは、その後1986年に内閣告示が再び改定され次のように定められました。
「一般に二語に分解しにくい次の語は、『じ』『ず』を用いて書くことを本則とし、『ぢ』『づ』を用いて書くこともできるものとする」
このルールの例に「ひとりずつ」が挙げられています。
すなわち、公文書や教育現場、新聞・雑誌などの公の文書では「ずつ」と表記するのが基本であると定められたわけです。
ただし新内閣告示の後段部分にあるとおり「づつと書いてもよい」とされていますので、「少しづつ」も間違いというわけではありません。
ビジネスシーンや公の場などでは「ずつ」を用いるのがが望ましく、メールやSNSなど私的なやり取りではどちらを使用しても構わない、と整理すると分かりやすいでしょう。
「少しずつ」の例文を教えて?
最後に「少しずつ」の例文をご紹介します。
例文
「少しずつ」(現代仮名遣いに従い、以後は「ずつ」と表記します)の例文としては、次のようなものが挙げられます。
- ご飯は少しずつ、よく噛みながら食べなさい。
- 一気に急いで終わらせようとすると失敗するものだ。物事は一歩一歩少しずつ、確実に進めていくのがよい。
- あの立木の間隔ですが、一本一本をもう少しずつ広げられませんか。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
「少しずつ」「少しづつ」どちらの表現が正しいのか、そして違いや意味、例文について詳しくご紹介しました。
おさらいをすると「少しずつ」「少しづつ」どちらの表現を使っても間違いではないということでした。
ですが、ビジネスの場などでは「少しずつ」と表現した方が良さそうですね。