「枯淡」という表現方法を知っていますか?
ビジネスシーンや普段の生活の中であまり見かけない表現方法だと思います。まず「枯淡」と書いてなんと読むのか、そこからの人も案外多いんじゃないかと思います。
そんな本日は「枯淡」の読み方と意味、そして正しい使い方と類語・例文について詳しくご紹介したいと思います。
「枯淡」の読み方と意味は?
まず「枯淡」の読み方と意味について見ていきましょう。
「枯淡」とは【こたん】と読む名詞です。
「枯淡な~」と形容動詞として用いることもあります。
「枯淡」の「枯」という漢字は、会意文字兼形声文字です。
木ヘンと「古」という字から成り立っています。
木ヘンは「大地を覆う木」を表したものであり、「古」は「固いかぶと」を意味したとされます。
ここから「枯」は「木が枯れて、固くなり、古くなる」という意味を表すようになりました。
ただこうした元来の意味が日本語では転じて、「人物や技術が磨かれて深みが増す」や「技術や品物が、出現から十分な時間がたち、さまざまな問題点が出尽くしてその解決も済んでいる」といった、日本語固有の内容を示すようにもなりました。
また「淡」という漢字は会意文字であり形声文字です。
「さんずい」と「炎」という文字から構成されています。
さんずいは「流れる水」を表し、「炎」は「燃え上がる火」の形を示します。
つまり日光を受けて水面から盛んに立ち上がる「陽炎(かげろう)」を表したのが、そもそもの「淡」だとされます。
「陽炎」とは、水面や地面から炎のように立ち上る揺らめきの現象のことです。
ここから、「淡」という字は「ほのかな」や「薄い」といった意味合いになったようです。
このように、「枯淡」は文字通りには「枯れ果て、淡い色合い」といった、何やらぼんやりとした色彩や情景を示す言葉に感じられます。
この言葉は日本固有の名詞であり、和語で言い換えるならば「侘び、寂び」といった日本ならではの心象風景を表現する言い方です。
「侘び」とは、茶道や俳諧などにおける美的理念の一つであり、「飾りや奢りを捨て、簡素の中に見いだされるひっそりとした、清澄、閑寂な趣」とされます。
これは中世以降に形成された美意識で、茶の湯で重視されたものです。
一方の「寂び」も、「古びて味わいのある渋い趣」といった美的感覚を示す表現です。
この両者は本来は別の概念とされますが、その明確な差異は、日本人といえどもなかなか理解しにくい哲学的、観念的なものです。
このため現代では「わびさびの~」などと、ひとまとめの表現として使われることも多くなっています。
「枯淡」もほぼ、意味合いとしては「侘び、寂び」に近いと考えられます。
すなわち、「あっさりしていてしつこくないこと」、「世俗的な名利にとらわれず、さっぱりしていること」といった、日本的に尊ばれる美意識だといえます。
または「俗っぽさがなく、質素な中にも趣が感じられること」、「淡々としつつも内容は練れていて、深みがあるさま」といった意味合いでもあります。
「枯淡」の正しい使い方は?
次に「枯淡」の正しい使い方を見ていきましょう。
こうした「枯淡」という言葉は、一般には書画、美術品、文章作品などについて評価する際に用いられることが多いといえます。
日本的な美の感覚にそって趣があるという、肯定的な評価に使われるのが通例です。
「枯淡」はこのほか、人柄やものごとの性質についても言い表す場合があります。
その場合は美的評価というよりも「性格がさっぱりしていて変なこだわりがなく、俗っぽさがない」、「質素で、ありのままの自然体だ」といった形容として使われます。
このため、作品の批評などに用いる場合は、相手にとってもおおむね肯定的な受け止めをされることが多いといえますが、人の性格や人物評に用いる際には、相手との関係やTPOなどをある程度注意して表現することが必要かもしれません。
「枯淡」は前述のように、やや観念的な幅広いニュアンスを持ちますので、こちらが「飾らないさっぱりしたいい人だ」との意味で述べたとしても、相手が受け止める意味合いによっては「面白みや味気のない淡泊な人物」などとみなされることもあり得るからです。
いずれにしても「枯淡」はかなり古風な、堅い文章語ですので、日常的な会話やビジネスシーンなどで使うことはまれだといえるでしょう。
日本語表現の一常識として認識しておけば、一般的には事足りるといえそうです。
「枯淡」の類語と例文も教えて?
最後に「枯淡」の類語と例文をご紹介したいと思います。
「枯淡」の類語としては、前述の「侘び、寂び」が代表的です。
このほかには下記の類語があります。
◆類語
- 風情がある
- 情趣がある
- 余韻
- しみじみする
- 心に響く
- 味わい深い
- もののあわれ
- 幽玄
- 幽趣佳境
- 渋味
- 静寂
- 閑雅
- 洒脱
などがありますね。
「枯淡」の例文としては次のようなものが挙げられます。
◆例文
- 彼は枯淡の生涯を全うした
- 作風に枯淡な芭蕉を感じた
- もっぱら枯淡な生活を送っている
- 我が人生も、枯淡の境地に入りたいものです
- 枯淡を尊ぶ風潮
- 和室の屏風には枯淡な墨絵が描かれている
- 先生の作品は枯淡や洒脱を本領とするものだ
「枯淡」の類語と例文をまとめてご紹介しました。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
「枯淡」の読み方と意味、そして正しい使い方と類語、例文について詳しくご紹介しました。
「枯淡」はビジネスシーンで使う表現方法というよりは美術や書画、文章作品に対して評価をする場合に用いる表現方法と言えます。
「枯淡」の類語や例文と照らし合わせながら読むとさらに理解が深まると思いますよ。