日々の生活の中でみなさんは「忍びない」という言葉を見聞きしたりしますか?
あまり聞きなれない言葉なので意味や使い方が曖昧…という人も意外と多いんじゃないかと思います。
そんな本日は「忍びない」の詳しい意味と正しい使い方、そして類語や例文、「申し訳ない」との違いや言い換え方を詳しく解説していきたいと思います。
「忍びない」の意味と使い方は?
まず最初に「忍びない」の意味と正しい使い方について見ていきましょう。
「忍びない」は「忍ぶ」という動詞を否定した形の言葉です。
「忍ぶ」とは、まず第一には「他人に知られないように、密かに行動する」という意味があります。
昔の「忍者」や「忍びの者」は、こうした隠密行動や内偵を専門にする、今で言うスパイのことですね。
第二には「つらいことをじっと我慢する、こらえる」という意味があります。
具体的には「恥を忍ぶ」、「堪え忍ぶ」といった用法になります。
もともと、「忍」という漢字には、この「耐える」という意味合いの方が先に存在したようです。
忍は、刀の刃という字の下に心という字で成り立っています。
刃は「じん」という音を表し、「心」は字の形を示します。
「刃」は表面的に硬い、あるいは内面が堅いもののことを表しますので、「忍」は心を堅くしてしっかりと耐えるさまを意味します。
そこから転じて、あるものが外部から見つけられないように、一生懸命に隠す、秘密にするという意味にも広がりました。
さらには、「むごい」「ひどい」という意味合いも持ちます。
「残忍」という熟語がこの用法に当たります。
ある意味で「忍」は、「苦しいことに耐える、必死で我慢する」というニュアンスと、まったく真逆の「平気で相手にむごいことをする」という意味を併せ持つ漢字であり、非常に奥深さのある言葉だと思います。
「忍びない」はこの「忍ぶ」を否定するわけですから、「むごい状況に耐えられない、平気でいられない」という意味になります。
主には「~するに忍びない」「~に忍びない」という動詞に連なった形で使われます。
「忍びない」の類語と例文は?
次に「忍びない」の類とと例文を見ていきましょう。
「忍びない」の類語をまとめておきますね。
◆類語
- ~するに堪えない
- たまらない
- 耐え難い
- 我慢できない
- つらい
- 胸苦しい
- いたたまれない
- やり切れない
- 心穏やかでない
「忍びない」の類語をご紹介しました。
「忍びない」の例文は次のようなものが挙げられます。
◆例文
- そのようなひどいお姿は、見るに忍びない。
- 大変おつらい思いをされたとのことで、お話を聞くに忍びありません。
- いろいろと思い出がつまっているから、この服は捨てるに忍びないなぁ。
- お気持ちを察するに忍びありません。
「忍びない」の例文を見ると意外と普段、何気なく使っている言葉なのかもしれませんね。
もし「忍びない」という表現をする場合は上記の例文を参考にしてみてください。
「申し訳ない」との違いと言い換え方は?
最後に「忍びない」と「申し訳ない」との違いと言い換え方について見ていきましょう。
「忍びない」は、普段、メールや文面で気軽に使うことの多い「申し訳ない」と一見似ていますが、意味合いにはかなり違いがあります。
そもそも「申し訳ない」の「申し訳」とは、「相手に迷惑をかけたとしても、自分のしたこと自体は悪くなかった、やむを得なかった」と弁明することを指します。
「これで申し訳が立つ」といった言い方をします。
ですから「申し訳ない」は、こうした弁解ができないこと、「自分のしたことに説明の余地はなく、すまない」という意味になります。
すなわち相手に謝る際の表現です。
ちなみに、相手のためになることをする際に「申し訳程度ですが」「申し訳ばかりですが」と言葉を添えることがあります。
これは「実際には十分だが、申し訳の口実としてささやかに行いました」との意図を示す、自分をけんそんする表現です。
これに対して「忍びない」は、前述のように、相手のつらい、苦しい状況について心から同情し、気持ちに寄り添う意志を示す言い方です。
このように、自らに非があって謝罪する場合には「申し訳ない」を、相手の苦境を察して同情を示し、「何か支援をさせてもらえないだろうか」と意思表示をする場面では「忍びない」を使うのがふさわしいといえるでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
「忍びない」の詳しい意味と正しい使い方、そして「申し訳ない」との違いと言い換え方について詳しくご紹介しました。
若い人たちだと普段、なかなか使う機会の少ない言葉だと思いますが、最低限の意味や使い方だけでも覚えておいてもらえると嬉しいです。