新聞や雑誌、テレビのニュースなどを見ているとよく「苦言を呈する」という言葉を見聞きします。
言葉の作りを見るとポジティブな表現方法ではない気がしますが、いったいどんな意味を持ち、どんな場面で活用する言葉なのでしょうか。意味と使う場面をしっかり頭に入れておきたいですね。
そこで「苦言を呈する」の意味と正しい使い方、そして類語と例文を詳しく解説したいと思います。
「苦言を呈する」の意味は?
まず始めに「苦言を呈する」の意味を見ていきましょう。
「苦言」の意味
「苦言を呈する」という語句は「苦言(くげん)」という名詞と、「呈する(ていする)」という動詞から成り立っています。
「苦言」の「苦」という漢字は、くさかんむりと「古」という字から構成されています。
くさかんむりは「並びは生えた草」の象形を意味します。
「古」はこの字の場合は「固い兜(かぶと)」を示しているとされます。
つまり「苦」とは「固い草」のことで、そこから「食べても固くて苦い草」、転じて「味がにがい」、あるいは「苦しい」という意味になったようです。
さらに現代では意味の幅が広がり「悪い」、「悩み・痛み」、「無理がある」、「難しい」といった趣旨でも用いられることがあります。
「言」はこの場合は「げん」と発音し「人が発した言葉」や「話した言葉そのもの」を意味します。
「本人の言を信じる」といった使い方があります。
このことから「苦言」は直接的には「悪い言葉」ということになりますが、単なる「悪口」、「嫌み」ということではなく、「言われる人にとっては気分が悪いが、その人のためにあえて言わねばならない厳しい言葉」といった意味合いを示します。
すなわち「本人にとっては耳障りだろうが、態度をあらためてもらうために、言いにくくとも直言していさめる言葉」というニュアンスです。
「呈する」の意味
次に「呈する」をみてみましょう。
「呈」という漢字は「口」と「王」という字で成り立っています。
これは人の口と「階段」を意味しているとされます。
「階段」は「突き出る」という意味合いで、「呈」は「口から突き出る」、さらには転じて「表す・示す・表現する」という趣旨の字になりました。
また「差し出す、たてまつる」といった意味でも用いられます。
「活況を呈する」なら前者の使い方、「書物を呈する」であれば後者となります。
これらのことから「苦言を呈する」は「相手のことを思い、改心のため敢えて言いいくいことを言わせてもらう」といった意味となります。
「苦言を呈する」の使い方は?
次に「苦言を呈する」の正しい使い方を見ていきましょう。
このように「苦言を呈する」は、ある意味で「正しいあり方に導くために、相手には都合が悪い事柄でも、ズバリ直言して考え直してもらう」といった〝正義感〟からの行動ともいえます。
そして「呈する」は、それ自体で「たてまつる、差し上げる」と尊敬のニュアンスがある言葉ですので、「苦言を呈する」は「居住まいを正して、相手にとって嫌な内容を正直に述べさせていただく」といったように、丁寧な態度で話すという意味合いを持ちます。
このため「苦言を呈する」自体は、相手が目上や立場が上の人、あるいは同輩や目下に対してもいずれにも使うことができます。
ただ通常、目上や尊敬すべき相手に「嫌なことを直言する」場面というのは、余程の緊迫した事態だともいえます。
目下・後輩に対しては、自分が指導的立場にあればなおさら、日頃の言動などについて戒めたり諭す「苦言」もあり得るでしょう。
目上の人に対して、どうしても諫言しなければならない状況であれば、TPOをわきまえ誠意が伝わる丁寧な表現が大切です。
例えば「このような申し上げ方は甚だ失礼とは重々承知していますが、あえて苦言を呈させていただきます」といった言い方です。
「苦言を呈する」の類語と例文を教えて?
最後に「苦言を呈する」の類語と例文をご紹介します。
類語
「苦言を呈する」の類語には次のようなものがあります。
- 諫める
- 諭す
- 意見する
- 耳の痛い話をする
- 仮借のない批判をする
- 自戒を促す
- 辛辣な意見を述べる
- 歯に衣着せず指摘する
例文
「苦言を呈する」の例文としては次のようなものが挙げられます。
- 彼は、自分に合わないと短期間に転職を繰り返してばかりいるので、先日、少しは我慢も必要だよと苦言を呈しておいた。
- 真の友とは面と向かって苦言を呈してくれる人のことだ。
- あまり若い人にガミガミ苦言を呈してばかりいると、年寄りのやっかみと思われそうだ。
「苦言を呈する」の類語と例文をまとめてご紹介しました。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
「苦言を呈する」の意味と正しい使い方、そして類語と例文を詳しくご紹介しました。
おさらいをすると言われた本人からすると耳障りな言葉ですが、その人のことを思って改心して欲しいという気持ちを込めて伝える言葉になります。
著名人やアナウンサーがテレビのニュースでよく使っている言葉なので、今後もよく耳にするでしょう。
意味と使い方についてはすでにバッチリですね!