普段、生活している中で「差し迫る」という言葉をよく使いますか?
よく「差し迫った問題」などと使っているのを聞きますが、「年末が差し迫って」と使っている人もたまに見かけます。「差し迫る」と同じ表現で「押し迫る」という言葉があります。
どんな場面で使う言葉なのか迷ってしまう人も多いかと思います。
そこで「差し迫る」の意味と正しい使い方、そして「押し迫る」との違いや類語、例文を詳しくご紹介したいと思います。
「差し迫る」の意味と使い方は?
まず最初に「差し迫る」の意味と正しい使い方を見ていきましょう。
「差し迫る」(さしせまる)という表現は、「差し」という接頭語と「迫る」という動詞から成り立っています。
「差し」という接頭語は、動詞の前に付いて、全体の語調を整えたり意味を強めたりする働きをします。
例えば「差し出す」、「差し戻す」、「差し替える」といった使い方があります。
また「迫る」という動詞は「圧倒するような勢いで近づいてくる」や「押し寄せる」といった意味の言葉です。
あるいは「空間的、時間的に隔たりが小さくなる」、「何かに接近する」ことを示す場合もあります。
「津波が迫る」、「試合が迫る」といった用例です。
このことから「差し迫る」は「迫る」をより強めた言い方だといえます。
- 時期や期限が非常に近づく
- 事態や期日などが間近になってくる
といった意味合いです。
「差し迫る」という表現はまた、時期などが接近することを表すだけでなく、「ある物事や課題自体に、あまり時間をかけることができない」といった場合にも用いられます。
「パワハラ、セクハラへの対策は差し迫った問題であり、猶予はない」などという使い方です。
つまり早めに解決すべき問題や仕事などについて、そのことを強調する意味合いがあります。
「差し迫る」と「押し迫る」の違いと使い分けは?
次に「差し迫る」と「押し迫る」の違いと使い分け方を見ていきましょう。
このように「差し迫る」は「切迫しており、せっぱつまっている」というニュアンスを感じさせます。
ある物事に対して、危機感を訴え、対応することに、あまりゆとりがないさまをにじませる表現です。
「押し迫る」の意味と使い方
一方、「時期が近くなる」といった似たような表現に「押し迫る」という言葉があります。
間近に時期が近づいていることを示す意味では「差し迫る」と近い言い方です。
「押し迫る」の「押し」も「差し」と同じく接頭語で、やはり動詞の前に付き、「強引に」、「強力に」、「無理に」といった意味合いを示します。
例えば「押しつける」、「押し通す」といった言い方です。
このほか「押し」は後の動詞を単に強める意味合いも持ちます。
例えば「押し黙る」がその用い方です。
「押し迫る」の場合もこの後者の強調的な言い方で、「何らかの時期がいよいよ近づいてきた」という意味合いを示します。
ただ「差し迫る」では対象の期日がはっきり確定している印象がありますが、「押し迫る」ではそうではありません。
「押し迫る」は「暮れ」「季節」などといった、「特定の日」ではない漠然とした時間の幅を指す際に使われるといえます。
「締め切り」「危機」などのように「ある日時までにま必ず対応しなければならない」場合では「差し迫る」が用いられます。
反対に、不特定多数の人に等しく訪れる季節やイベントなどに関しては、「差し迫る」は適切ではなく、「押し迫る」を使うべきだといえるでしょう。
ちなみに「押し迫る」の類語に「押し詰まる」という言い方もあります。
この二つには切迫感の違いがあり、「暮れが押し詰まる」というと、「押し迫る」よりも、さらに年末の大晦日に近づいているというニュアンスが感じられます。
すなわち、時間的間隔が狭い印象の表現です。
「差し迫る」と「押し迫る」の類語と例文は?
最後に「差し迫る」と「押し迫る」の類語と例文をご紹介します。
類語
「差し迫る」と「押し迫る」の類語には次のようなものがあります。
- 近づく
- 接近する
- 近くなる
- 近まる
- いよいよ来る
- 到来する
- まもなくだ
- あとわずか
などがあります。
例文
「差し迫る」、「押し迫る」の例文としては次のようなものが挙げられます。
- 今年も年の暮れが押し迫ってきた。
- 年の瀬が押し迫って参りましたが、いかがお過ごしでしょうか。
- 毎年、年度末が押し迫ると、なんだか社内もせわしなくなるね。
- 納期がもう来月末に差し迫ってきた。いよいよ忙しくなるな。
- 今週末にも、超大型の台風が直撃する危険が差し迫っている。
- 思えばあの時、彼の声の調子はかなり差し迫っていた感じだった。
「差し迫る」と「押し迫る」の類語と例文をまとめてご紹介しました。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
「差し迫る」の意味と正しい使い方、そして「押し迫る」との違いと類語、例文を詳しくご紹介しました。
おさらいをすると時期や期限が迫ってくる時に使う言葉が「差し迫る」です。
時期や期限だけではなくある物事などに時間をかける時間がない、切迫した状況の時にも使います。
年末が迫ってくるときは「差し迫る」ではなく「押し迫る」が正しいということも頭に入れておきましょう。