みなさんは普段、「末席を汚す」という言葉を聞いたり使ったりしますでしょうか?
何気ない会話の中で「末席を汚す」という言葉を使う機会はなかなかないと思いますが、もし使う機会がある人は意味や使い方は知っておきたいものです。
そんな本日は、「末席を汚す」の詳しい意味と使い方、類語、例文をご紹介したいと思います。
「末席を汚す」の詳しい意味は?
最初は、「末席を汚す」の詳しい意味について見ていきましょう!
そもそも「末席」(まっせき)とは、その場で地位が最も下の人や、お客をもてなす側の主催者が座る席のことです。
一般に「末席」は、ある部屋や会場の中で、主賓からは最も遠く、出入り口に一番近い場所とされています。
会社の役員会を例に挙げれば、社長は円卓会議室の一番奥の中央に座り、新参の取締役は最も隅の「末席」に座る、といった具合です。
次に「汚す」は、この文では「よごす」ではなく「けがす」と読みます。
「よごす」は「しょうゆをこぼしてテーブルをよごした」など、単に物理的に、もともときれいだったものを汚くすることです。
一方「けがす」は、それよりも、次のようにやや深い意味を持ちます。
「けがす」は「穢す」とも書きます。
日本に古来ある「けがれ」という言葉にも通じる表現です。
本来、よごれてはならない神聖なものや清らかな場所、大切なものなどを汚くしたり、荒れ果てた状態にすることを意味します。
「神聖な存在を冒涜する」というニュアンスを持ちます。
これが転じて、「恥ずかしい行いや失敗をして、名誉や誇りを傷つける」といった意味にもなります。
あるいは「自分には身に余る、能力を越えた地位や場所にいる」ということを、謙遜して言う場合にも使われます。
これらのことから「末席を汚す」とは、ある会合や団体の中で、「身分不相応の私ではありますが、一番地位が低い最後方の席に、恥ずかしながら座らせてもらいます」と、へりくだって表現する言い方だといえます。
仮に相手がこのように述べたとしても、実際にはそんなことはなく、たいていは、その団体のリーダーに選出されたり、三顧の礼を受けて主要なメンバーに加わるといったように、むしろ非常に有能な人である場合が多いかもしれません。
それでも、あくまで「自分のような能力のない者が加わって、会の名誉を傷つけたり、業績に悪影響にならなければよいんですが…」と奥ゆかしく述べる含蓄を持つ、日本的な礼節に富んだ言い方だといえます。
集会などに遅れて参加したり、集団の仲間に後から加わったような場合に、あいさつなどでへりくだって述べるときの表現でもあります。
「末席を汚す」の正しい使い方は?
次に「末席を汚す」の正しい使い方について見ていきましょう!
「末席を汚す」は、ある団体や会合に参加することについて、「身の程を越えたことだが」と自分をへりくだって言う際の表現です。
「汚す」だけですと、「社長職を汚す」「委員長職を汚す」など、単独の役職についても謙譲の表現として使うことができます。
一方、「末席を汚す」と一文で言う場合は、複数のメンバーが加盟する団体などの名簿に名前を連ねる場合について使用します。
このため、多くの場合はその団体や集会への参加を認められた際に、会合でのあいさつなどの場で、自己紹介するときに使われることが多い表現だといえるでしょう。
例えば「きょうからこの部の末席を汚させていただく、○○と申します」といったような事例です。
あるいは、以前から参加しているその団体の中で、催された会合でスピーチする際や、他の団体の会員らとあいさつを交わすときなどにも使われます。
例えば「私、もう10年ほど前から当会の末席を汚しております」などと述べるような場合です。
「末席を汚す」の類語と例文は?
最後に「末席を汚す」の類語と例文について見ていきましょう。
「末席を汚す」の類語を下記にまとめておきますね。
◆類語
- 籍を置く
- 名を連ねる
- 下座に控える
- 下座につく
- 末座に連なる
「末席を汚す」の類語をご紹介しました。
また「末席を汚す」の例文には次のようなものが挙げられます。
◆例文
- このたび、選考委員の末席を汚させていただくことになりました。
- 数年前から、この会合で末席を汚しております。
- 私も実は、あの晩餐会に招かれ、末席を汚していたんですよ。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
「末席を汚す」の意味と正しい使い方、そして類語や例文について詳しくご紹介しました。
詳しい意味を理解していないとなかなか使うのが難しい言葉だと思いますが、そういう場合は是非、この記事を参考にしてみてくださいね。