普段の生活の中ではあまり耳にしない「参ります」という表現方法。
どっちかというとビジネスシーンでよく耳にする言葉だと思いますが、どんな意味のある言葉か知っていますか?漢字だけを見ると「行く」という意味があるのは分かりますが、その他にも何か意味がありそうですよね。
そこで「参ります」の意味と正しい使い方、そして敬語や類語、例文について詳しく解説したいと思います。
「参ります」の意味と使い方は?
まず始めに「参ります」の意味と正しい使い方を見ていきましょう。
「参ります」は、「参る」という動詞を丁寧に表現した言い方です。
「参る」は、かなり意味合いが多岐にわたる言葉です。
第一には、「行く」、「来る」の謙譲語としての使い方があります。
話している先の相手を敬う言い方で、聞き手と話している相手が一致している場合に用います。
例えば「これからそちらへ参ります」といった使い方です。
第二には、「行く」や「来る」を丁寧に、相手への敬意を込めて述べる言い方です。
「駅までご一緒に参りましょう」といった用例です。
さらに「神社や寺院、墓に言って拝む」という場合の謙譲語でもあります。
「あすは待望のお伊勢参りだ」といった形です。
ほかには、用例はまれですが、「行く」や「来る」の尊大語という使い方もあります。
上位の者が目下の人に命じるような用例で、例えば「苦しゅうない。早くこちらへ参れ」といった一文となります。
また、相手の能力や力に屈服した意思を表明する言い方でも用いられます。
「いやあ、さすがにお強い。参りました」といった用例が挙げられます。
このような多様な表現のうち、現代のビジネスシーンや日常的な会話の場面では、「尊大語の参る」以外の意味合いが、「参る」のしばしば使われる言い方といえるでしょう。
前述のように微妙に意味合いや用例が異なる「参る」ですが、元来は一つの古語から由来した言葉のようです。
古語では「まゐ入る」(まいいる)という言葉があり、これは古代の貴族社会で、位の高い公家の元へ行くことや、宮中などに出仕することを表しました。
時代が下り音変化を起こし、「参る」と短縮化されたようです。
このように古来は「尊い方のもとへ参上する」ということですから、それが転じて「行く」や「来る」をへりくだって述べたり、丁寧に表したり、また神社仏閣へ行くことにも用いられるようになったと考えられます。
一般的にビジネスシーンなどでは、「参ります」は、「誰かが来ること」、あるいは「自分や自分側の人物が行くこと」について、自分の側を低めて相手を敬う言い方という整理が分かりやすいかもしれません。
なお「参ります」は補助動詞として使われることもあります。
「見てまいります」や「持ってまいります」など、やはり自分の行動をへりくだって丁寧に言う表現ですが、この場合は漢字は使わず、通例はひらがな表記となります。
「参ります」は敬語として正しい?
次に「参ります」は敬語として正しいのかご紹介します。
「参ります」の原語である「行く」と「来る」は、ベクトルの向きが異なるだけで同じ行動を示しています。
「参ります」だけではどちらなのか判別が難しいですが、その言葉を発している人がどこにいるのか、によって意味を特定することができます。
例えば「山田」という身内の者が、A社からB社に移動するとき、自分がA社にいる場合は「行く」という意味で「山田が参ります」と言います。
一方、自分がB社にいるときは「来る」という意味で「山田が参ります」と述べるわけです。
「参ります」の敬語表現が難しいところは、これが常に謙譲の意味合いを含んだ言い方だという点です。
つまり、「参ります」の対象となる主語を低めて言うことで、話をしている相手を高める用法だといえます。
そのため「参ります」を敬うべき相手自体に使うのは誤用となりますので、注意が必要です。
例えば「明日、先生がこちらへ参られます」といった言い方は間違った敬語となります。
この場合は尊敬語を用いなければなりませんので、「先生がいらっしゃいます」や「先生がおいでになります」が正しい敬語になります。
【関連記事】:「お伺いします」の使い方と意味は?「参ります」との違いや使い分けも調査!
「参ります」の類語と例文を教えて?
最後に「参ります」の類語と例文をまとめてご紹介します。
類語
「参ります」の類語には次のようなものがあります。
- まかり越します
- 推参します
- 参じます
- うかがいます
- 伺候いたします
- 見参します
- 参上いたします
- はせ参じます
- 参内します
- 出頭いたします
例文
「参ります」の例文としては、次のようなものが挙げられます。
- このバスは市役所へ参りますか?
- 今年の夏休みには実家へ参ります。
- 来週、弊社の○○が御社へ参ります。
- はい、ただいま参ります。少々お待ちください。
- お客様、お迎えのお車はあと十分ほどで参ります。
- 田中はまもなく参りますので、どうぞこちらにお掛けになってお待ちください。
「参ります」の類語と例文をまとめてご紹介しました。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
「参ります」の意味と正しい使い方、そして敬語、類語、例文について詳しくご紹介しました。
おさらいをすると「参ります」は自分が行く場合、もしくは自分側の誰かが行く際に相手を敬う表現方法と覚えておきましょう。
意味と正しい使い方をしっかり覚えて相手に誤解のないように使いましょう!