ビジネスシーンなどでよく使われる「幸甚(こうじん)」という言葉があります。
初めて聞く人もいるかもしれませんが、社会に出るとなかなか聞き慣れない言葉を使う機会が増えてくるのでこれを機に是非、覚えておきましょう。社会人にとって語彙力が豊富だと何かと便利ですし、有利になると思います。
そんな本日は「幸甚(こうじん)」の意味と使い方、そして類語やビジネスで使う場合の注意点をご紹介したいと思います。
「幸甚(こうじん)」の意味と使い方は?
まず最初に「幸甚(こうじん)」の意味と使い方を見て行きましょう。
「幸甚」という言葉は名詞ですが、通常は「幸甚だ」、「幸甚な」などと形容動詞として活用することが多い表現です。
「幸甚」の「幸」という字は、象形文字です。
この字自体が「手かせ」の形を示しているとされ、「さいわいにも手かせをはめられるのを免れた」という状況から、「しあわせ」を意味するようになったとの説があります。
また「幸甚」の「甚」は象形文字です。
「かまどの上に水をいっぱいに入れた器を載せ、下で火をたく」という行為を表したものとされ、本来は「おきかまど」を意味したそうです。
それが転じて「はなはだしい」、「度を越えている」、「ひどい」といった意味合いを示す字となったとされます。
このように「幸甚」は、文字通りには「甚だしく幸せであるさま」を示す言葉だといえます。
すなわち「この上もない幸せ」や「大変ありがたいこと、そのさま」、「何よりの幸せ」といった、高揚した気持ちを表す言い方です。
一般には、日常の会話、やり取りで使われることは少なく、かしこまった手紙や文書で使用される「儀礼用語」や「あいさつ言葉」の一種と考えてよいと思います。
「幸甚」は通常は形容動詞的に用いられると冒頭で述べましたが、明治時代の教育者であり啓蒙思想家である福沢諭吉が、幼年教育について著した書の中に「各地方小学教師のために備考の一助ともならば幸甚のみ」とあります。
これは名詞としての用例ですが、「幸甚のみ」として「幸せでしかない」との趣旨を述べており、これも「この上なく幸せである状態」を表現している文章例といえるでしょう。
社内やビジネスで「幸甚」を使う場合の注意点は?
このように「幸甚」は、現代の手紙文では「非常に有難い」、「何よりのしあわせ」という意味で使われます。
ビジネスシーンでも、顧客など外部との文書のやり取りや、社内の事務連絡などでも頻繁に登場する表現です。
ビジネスなどで「幸甚」を使う場面としては、相手に何かを依頼する場合のほか、贈り物をする際に言葉を添える場合に用いることが多いようです。
通常は「幸甚に存じます」の形がほとんとで、ほぼ「定型句」となっているといえるでしょう。
「程度を超えて幸せである」ことを示すのが「幸甚」ですが、さらにそれを強調する「幸甚の至り」というかしこまった表現も使われます。
似たような表現に「~幸いです」という言い方もあります。
自分から相手に何かを依頼する場合に、「〜していただけますと幸いです」という言い回しをして、へりくだった形で丁寧に伝える用例です。
何かを依頼するという行為は、どうしても「上からものを言う」印象を与えがちですが、そうした場合に「幸いです」を用いることで、恐縮する度合いを高める効果があるといえます。
さらに相手が目上の人であったり、取引先や顧客の場合は、「思います」の敬語表現である「存じます」を使い、「幸いに存じます」とするとより丁寧な印象が強まります。
こうした表現の中でも「最上級」であるのが「幸甚」だといえるでしょう。
その意味では、目上の人や外部の顧客などに対するかしこまった文面等では「幸甚」を、社内の対等な立場での連絡などでは「幸いです」を用いるなど、使い分けてもよいかもしれません。
「幸甚(こうじん)」の類語と例文は?
最後に「幸甚(こうじん)」の類語と例文をご紹介します。
「幸甚」の類語には次のようなものがあります。
◆類語
- 有り難い
- かたじけない
- この上ない
- 至幸
- 天の配剤
- 天祐
- 僥倖
- 至慶
- 至福
- 冥利に尽きる
などがあります。
「幸甚」の例文としては次のようなものが挙げられます。
◆例文
- 次回、ゲストとしてご出席いただければ幸甚に存じます。
- つきましては、事故に関する調査記録をお送り頂けましたら幸甚です。
- お心当たりの方、当方までご一報いただければ幸甚に存じます。
- 先生に思いがけず再会でき、幸甚の至りです。
「幸甚(こうじん)」の類語と例文をまとめてご紹介しました。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
「幸甚(こうじん)」の意味と正しい使い方、そしてビジネスの場で使う場合の注意点について詳しくご紹介しました。
ビジネスシーンでよく使ったり聞いたりする言葉なので意味や使い方を覚えておくと良いでしょう。
類語や例文を交えて覚えておくとより理解が深まるので良いかもしれませんね。