みなさん、「けだし」という表現方法を知っていますか?
「蓋し」と書いて“けだし”と読みますが、どんな意味のある言葉なのか気になりますよね。
そしてどんな場面で使う表現方法なのかも知っておきたいところです。
そんな本日は「蓋し(けだし)」の意味と正しい使い方、そして類語と例文について詳しく解説したいと思います。
「蓋し(けだし)」の意味は?
まず最初に「蓋し(けだし)」の意味について見ていきましょう。
「蓋し(けだし)」という言葉は、副詞で後に続く文を修飾し強める働きがあります。
「蓋し」の「蓋」という漢字は、会意文字、及び形声文字です。
くさかんむり「艸」と「盍」という字で構成されています。
くさかんむりは「並び生えた草」の形を示します。
「盍」は「覆いの形と食物を盛る皿の形」を示すとされ、「覆う」という意味になることから、「蓋」は「草を編んで作った覆い」を表したとされます。
そこから転じて「蓋」は「覆う」、「かぶせる」や、「ふた」、「覆い」を意味するようになりました。
ただ「けだし」は古語にも見える日本古来の表現です。
古代の中国語では「蓋」は「恐らく」や「まさに」といった意味で使用されることがあり、これを漢文訓読で読み下す際に、近い意味の「けだし」という読み方を当てたのが、「蓋し」の由来だとされています。
例えば漢文に「周之建国也、盖千八百诸侯」(周が国を建てた時、恐らく千八百の諸侯がいた」といった一文があり、これが「けだし」と読まれたわけです。
また明治時代には、哲学書の翻訳で、英語の「probability」の訳語として「蓋然性」という言葉が使用されており、これも漢文表現を援用して「ある程度確実であること」を示す言葉として「蓋」が使われたとみられます。
日本の古語の「けだし」は、下に疑問の語を伴って「ひょっとすると」を意味するほか、また下に仮定の表現を伴って「もしかして」という意味合いを示しました。
「けだしく」や「けだしくも」といった活用でも使われました。
また「多分」、「大体」という意味でも、例えば源氏物語に「風の力けだし少なし」(風の力は多分少ない)といったような用い方がみられます。
これが時代が下り、現代においては「蓋し」は、一義的には物事を確信をもって推定する意を表す言葉として使われるようになりました。
つまり「まさしく」、「おそらく」といった意味合いです。
そのほかにも、古語と同じように、あとに推量や仮定の意味を表す語を伴って、「もしかすると」、「万が一」、「おおよそ」といった意味でも用いられます。
さらには「そもそも」、「いったい」といったニュアンスでも使用されます。
「蓋し(けだし)」の正しい使い方は?
次に「蓋し(けだし)」の正しい使い方について見ていきましょう。
このように現在の「蓋し」にはいくつかの使い方があると考えられます。
基本的には「蓋し」は「もしかして」など推量を示す言い方ですが、その強さや度合いによって、意味合いが異なるといえそうです。
まず第一には、「かなりの確信をもって物事を推量するさま」という用法です。
「きっと」や「確かに」と言い換えることができるでしょう。
現代ではこの用例がほとんどともいえます。
さらに、やや確信の度合いが下がり、「疑いの気持ちをもって、推量したり仮定したりする意を表す」表現でも使われます。
これは「ひょっとすると」といったニュアンスでしょう。
さらに今では事例は少ないですが、「蓋し」は「改めて説明するとき」に用いる場合もあります。
これは「そもそも」、「いったい」といった言い換えが可能です。
いずれの使い方にしても、「蓋し」はかなり古めかしい、文語的な表現ですので、会話などではなくほぼ文章語でしか使うことはないといえます。
「蓋し(けだし)」の類語と例文が気になる!
最後に「蓋し(けだし)」の類語と例文をご紹介したいと思います。
前述の用例に従って、「蓋し」の類語と例文をご紹介していきましょう。
「確信が強い」場合の類語は「まさしく」、「確実に」、「疑いなく」などがあります。
この場合の例文としては「蓋しその通りであろう」、「蓋し名言といえる」などが挙げられます。
また「確信が弱い」場合の類語は「もしや」、「恐らく」、「万一」などです。
この用例の例文は「そんな立派な人は、蓋しおるまい」などがあります。
「あらためて強調する」の場合の類語は「すなわち」、「だいたい」などです。
例文としては、ほぼ古い和漢混淆文などにしか見えない表現であり、「よって勧進修行の趣、けだしもってかくの如し」(平家物語)などとなります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
「蓋し(けだし)」の意味と正しい使い方、そして類語と例文について詳しくご紹介しました。
古くから使われている表現方法なのでその都度、意味合いが変わり、使い方も変化してくるので少し難しいかもしれませんね。
意味や使い方をしっかりと理解して、相手に誤解のないように活用したいですね。