学生時代に習った漢字に「衛星」と「衛生」という表現方法があります。
両方とも同じ読み方をする漢字ですが、どんな意味合いがありどんな場面で活用する言葉なのでしょうか。日々の生活の中で活用する機会も多い言葉なので正しい知識を覚えておきましょう。
そんな本日は「衛星」「衛生」の違いと使い分け方、そして意味と例文を詳しくご紹介します。
「衛星」「衛生」の意味と使い方は?
まず始めに「衛星」「衛生」の意味と正しい使い方を見ていきましょう。
「衛星」と「衛生」という二字熟語はいずれも「えいせい」と読みます。
外見上の差異は「星」と「生」という字の違いだけという言葉ですが、意味合いは非常に異なります。
両方の熟語に共通する冒頭の「衛」という漢字は、「行がまえ」と「韋」という字から成り立っています。
「行がまえ」はもともと「十字路」の形を表したもので、「道を行く」という意味合いがあります。
「韋」は「向きが違う足」が「口」という場所を示す文字を上下に挟んだ形です。
これは「巡り歩く」という意味から、かつて古代中国で「宮殿の周りを歩き回る」といったことを示しました。
これらのことから「衛」は「兵が周囲を守る」、つまり「守る」、「軍営」、「営む」といった意味合いに転じたとされます。
一方「衛星」の「星」という字は、元来の旧字体では「晶」と「生」という字で構成されていました。
「星」はその略字です。
「晶」は空の星のことであり、「生」は「草木が地上に出てきたさま」、つまり「生まれる、生きる」を示す字です。
ただ「生」は「セイ」という音が「清」に通じることから、「星」は「澄んだ光の星」を意味するようになったとされます。
このように「衛星」は「中央の星を守るように巡る星」といった趣旨が原意だと思われます。
現代日本語では、科学用語で「惑星の周りを楕円軌道を描いて公転している天体」を意味します。
例えば地球に対する月などを指しますが、人工的につくられて地球の周りを回る機械は「人工衛星」と呼ばれます。
一方の「衛生」は文字通りには「人生を営む、生を守る」といった意味合いになります。
これは古代中国の思想家・荘子の「庚桑楚篇」にみえる表現です。
庚桑楚篇では、ただ無心にこだわりなく生きることこそが「衛生の経」(真に己の生命を全うする道)だと説いています。
現代日本語の「衛生」は、明治時代に欧米を視察した医学者が、国家や社会的な健康対策を意味する「hygiene」という言葉を訳す際に、荘子の「衛生」を当てたのが語源とされます。
すなわち「衛生」は「健康の維持向上を図り、疾病予防や治療に務めること」を意味します。
「衛星」「衛生」の違いと使い分けは?
次に「衛星」「衛生」の違いと使い分け方を見ていきましょう。
このように「衛星」は主に科学技術分野の用語であり、比喩的に一般の会話などでも用いられます。
そして「衛生」は、健康保健の維持に関する社会制度や公共機関の施策を主として示す言葉だといえます。
どちらの言葉も、元来は学術的な言葉が語源であり、比較的堅い表現ですが、現代では一般に馴染みある用語に浸透したケースもあり、日常会話などでもしばしば目にすることがあります。
「衛星」は元来は「惑星の周りを回る天体」という天文用語ですが、まるで空の衛星のように、大きな存在の周囲に子供のように付随しているさまを比喩して「衛星都市」(大都市と関係が深い付近の中小都市)、「衛星国」(大国に隷属する小国)といった言い方が生まれました。
また現代では人工衛星が一般の人の社会生活にも関わりが深い科学技術に発達し、「衛星放送」(人工衛星を用いたテレビ放送)や「衛星写真」(人工衛星から撮影した写真)といった表現が一般に使われています。
また「衛生」も学術・行政用語のほかに、「学校の衛生係」、「衛生兵」、「食べ物を直に机に置くのは不衛生だ」といった派生的な言い方も流布しています。
いずれにしても「衛星」、「衛生」は外見的に似ていますが、意味合いは全く違いますので、文章などで選択する際には慎重に行うことが大切です。
「衛星」「衛生」の例文を教えて?
最後に「衛星」「衛生」の例文をご紹介します。
例文
「衛星」、「衛生」の例文としては、次のようなものが挙げられます。
- この衛星写真に写っている黒い部分は、台風の目です。
- 衛星放送の生中継を見ていると、映像と音声がわずかにずれている気がするのだが、なぜだろう。
- そんなにいつまでも家の中にこもっていては、精神衛生上もよくないよ。
- 将来は歯科衛生士を目指そうと考えています。
「衛星」「衛生」の例文をまとめてご紹介しました。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
「衛星」「衛生」の違いと使い分け方、そして意味と例文を詳しくご紹介しました。
同じ読み方でもまったく意味の違う言葉なので、使い分けには注意したいですね。
「衛星」「衛生」の使い方については例文を参考に頭に入れておくと良いでしょう。